テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1023話】「行脚」 2016(平成28)年5月21日-31日

住職が語る法話を聴くことができます

1023_1n.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1023話です。
 東日本大震災発生から2週間ほど経った3月26日、ベトナム人の僧侶ビックさんが突然徳本寺を訪ねてきました。津波で襲われた沿岸部で慰霊の行脚をしているので2-3日泊めて欲しいとのこと。震災犠牲者の対応などで大混乱に陥っている時です。まだ瓦礫が散乱しているので危険だと言っても意に介さず、彼はひとり黙々と裸足で海に向かって歩いて行き、鎮魂と復興の願いを込めて、祈りを捧げてくるのでした。南の国出身の彼は、「私も寒いが、海の中で亡くなった方はもっと辛い思いをしている」と言うのです。
1023_2n.jpg あれから5年。ビックさんが歩いた道は、瓦礫があったとは思えないほど元通りの道になりました。そこを私は、裸足ならぬ草鞋履きで行脚しました。墨染めの法衣に手甲脚絆をつけ、網代傘をかぶるという出で立ちです。東北の曹洞宗僧侶が心をひとつにして、岩手・宮城・福島の沿岸部を慰霊と復興を願って行脚する「祈りの道」に参加したのです。
 岩手県側と福島県側から出発して、被災現場の沿岸部をおよそ100名の僧侶が、200キロの行程をリレー形式で行脚して、宮城県石巻市の寺に集結するというものです。私は5月8日福島県から行脚してきた一行に合流して、徳本寺の中浜墓地跡に建つ震災慰霊の千年塔を経て、更に沿岸部を歩き、津波で流されたもう一つの住職地である徳泉寺まで歩きました。千年塔前では大勢の御詠歌講員の方に出迎えられ、御詠歌の先導で千年塔にゴールするという感激も味わいました。海に向かってお経を挙げ、御詠歌をお唱えして、みなさんで鎮魂の誠を捧げ復興を誓いました。
 行脚とは修行僧が優れた師匠や修行の同志との出会いを求めて、諸国を遍歴することを言います。雲が行く如く水が流れる如く歩き続けるので、修行僧のことを「雲水」とも言います。この度の「祈りの道」は、本来の行脚とは、多少趣を異にするかもしれません。それでも、鈴を鳴らしながらお経を挙げて歩くと、5年前の道端の光景がまざまざと甦るのです。
 様々なものが散乱していました。鶏の死骸、靴の片方、農機具、自動車等々。倒れた道路標識は、町の地図が無くなると暗示しているかのようでした。そこかしこで、多くの方が非業の死を遂げています。行脚とはある種の出会いを求めての旅。私は「祈りの道」を歩き、お経を届けることで、無念の想いで旅立った多くの方に、改めて出会えたような気がしました。亡き人は、ベトナム人僧侶の裸足の足音から、今回の草鞋の足音までたくさんの鎮魂の想いを込めた足音を聴いて、少しは安らいでいるでしょうか。もしかしたら、亡き人も仏さまとなって行脚しているかもしれません。様々な復興の姿に出会うために・・・。亡き人に安心してもらうためにも、復興へ向けて更に精進しなければと、擦り切れた草鞋を見て思ったことでした。
 それでは又、6月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1251話】
「到彼岸」
2022(令和4)年9月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1251話です。 安倍元首相の国葬に反対の声が大きくなっています。その理由の一つに、きちんとした法の定めがないからです。一方、春秋の彼岸の中日にあたる、春分の日と秋分の日は、祝日法によりその意義も定められています。春分の日は「自然をたたえ、生きものをいつくしむ」、秋分の日は「先祖を敬い、亡き人をしのぶ」となっています。正々堂々とお... [続きを読む]

【第1250話】
「寛恕なる家族葬」
2022(令和4)年9月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1250話です。 「惜別の機会を近所の人にも」という新聞投書がありました。75歳のAさんが亡くなったとき、その息子さんに「近所の人には葬儀に来て頂かなくて結構です」とBさんは言われました。Bさんは独り暮らしのAさんの通院の送迎をしていたほど親しかったのです。身内だけの葬儀もいいが、親が頼りにして... [続きを読む]

【第1249話】
「日本一からの招待」
2022(令和4)年9月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1249話です。 地元の新聞「河北新報」の名前は、戊辰戦争に敗れた東北地方を軽視する言葉「白河以北一山百文」に由来します。明治30年創刊の河北新報は、この言葉を逆手に取って、東北復権の志を示そうと、敢えて「河北」と名付けました。 高校野球界においても、「東北地方は一山百文」的な見方をされてきた... [続きを読む]