テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第984話】「1票差」 2015(平成27)年4月21日-30日

住職が語る法話を聴くことができます

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第984話です。
 4月12日に行われた統一地方選挙前半戦は、知事選も県議選も投票率が過去最低となり、50パーセントに満たないという低迷ぶりです。そんな中で正真正銘の一票の重みを感じる選挙がありました。
 相模原市の市会議員選挙では、議員定数18議席で、18番目に当選を果たした得票数は3404票。19番目で落選した得票数は3403票で、しかも2人いました。わずか「1票差」で、2人も落選することとなったのです。因みに、無効票は2487票で、投票用紙の持ち帰りが2票ありました。
 2500票余りあった無効票を思えば、落選した人は、あと2票だけでいいから自分に入れて欲しかったと切に思ったことでしょう。投票に来なかった人は更に多いでしょうから、彼らに対して選挙運動期間中に、もうひと押しの訴えが足りなかったと後悔しているかもしれません。わずか1票されど1票です。
 一方、熊本市の市会議選挙で定数8議席の南区では、8番目の得票数が4515票で2人同数になりました。そこでくじ引きでの決定となりました。公職選挙法ではくじ引きの方法は示されていないそうです。今回は1-10の数字の棒を順番に引き、小さい数を引いた方を当選とする方式で行われました。予備抽選で引く順を決め、ひとりは「3」をひとりは「10」を引きました。当然「3」を引いた候補者が最後の議席を獲得しました。
 どんな選挙でも候補者は、ある程度当選または落選ということを想定していることでしょう。それにしても紹介したふたつの選挙は、千票単位の得票数がなければ当選しません。その中で落選するとすれば、百票単位の差がついてもおかしくないところです。誰が1票差を想定できたでしょう。建て前として「一票の重み」とは言いますが、現実的にそれを実感できることは少ないのではないでしょうか。でも絶対にないことではないのですね。
 翻って、私たちの人生は常に1票差だと思っていなければなりません。数える意識もなく呼吸を繰り返していますが、ある時次の一息が出なくなるのです。何票もあると思えば、たった1票の重みが見えてこなくなることがあります。それと同じで、普通に息をしているとき、たった一息の有り難さが分かりません。しかし命の決着はその一息にあるのです。くじ引きもなければ、誰も代わってはくれません。一息を無駄にしない生き方をしていれば、仏さまが最後の議席を用意して下さるでしょう。それは仏さまだけが座ることができる蓮華台です。
 それでは又、5月1日よりお耳にかかりましょう。

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