テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【1304話】「震災忘れじ」 2024(令和6)年3月11日~20日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1304話です。

 私は11月生まれです。よく母は「お前が生まれた日は寒かったのよ。柿もまだなっていてね」と言っていました。当時は病院ではなく、自宅で産婆さんに取り上げてもらったとか。自分の生まれた時のことなど、誰かに教えられなければ、知る由もありません。

 東日本大震災発生から13年を迎えるにあたり、地元紙河北新報は小学6年生を対象に震災の認知度を調査しました。現在の6年生は震災時には生まれていなくて、その後間もなく誕生した子どもたちです。お母さんに聞かされていた話として、「私がおなかの中にいた時に地震が来たから避難がたいへんだった」とか「おなかの中にいる私とベビーカーに乗っている姉を必死に守ってくれた」などを挙げています。勿論、津波で人が流されたことや、水道や電気が止まって、たいへんだったことも間接的に語っています。

 調査では震災発生日を尋ねていますが、82.3%が「2011(平成23)年3月11日」と正解できたものの、17.7%の児童は正しい回答ではありませんでした。正答率の地域別比較では、沿岸部の方が内陸部より少しいいようです。直接被害を受けた沿岸部では、震災関連の行事や情報に触れる機会が多いからと思われます。そして、「震災について家族と話すことはあるか」という設問では、「ほとんどない」「たまにある」がともに40%で、「よくある」は10%に達していません。ただ、「よくある」とした児童の震災発生日の正答率は90.9%と高くなっています。身近なところからの情報は、子どもたちに影響を与えていることがわかります。

 さて冒頭で自宅でのお産の話をしましたが、少し前まではご法事も自宅で行うことが普通でした。当然子どももいるわけですが、当主は親戚やお客さんに気遣って、「子どもはうるさいから向こうに行っていなさい」というお宅もありました。確かに子どもにとっても、大人に取り囲まれて、訳の分からないお経を、おとなしく聞いていられないかもしれません。でも、子どもは法事という非日常の雰囲気の中で、妙に印象に残るものがあったりします。大袈裟に言えば生きる死ぬという人生の一端に触れるいい機会なのです。やがて自分が当主の立場になったとき、先祖に対して素直に手を合わせられるようになるはずです。その先祖はあなたかもしれません。

 そのように、震災のことも、次世代に語り継ぐ事が必要です。人間は忘れることが得意です。私も毎年3月11日をお互い忘れないよう震災法要を営み、そのための大きな立て看板を書き、思いを新たにしています。
〈忘れじと太き筆書き立看板 復興法要十一年目〉文明。 一昨年3月河北新報の歌壇に掲載していただいた歌です。看板倒れとならぬように、これからも震災を忘れず精進いたします。

 ここでお知らせいたします。2月のカンボジアエコー募金は、1,207回×3円で3,621円でした。ありがとうございました。
 それでは又、3月21日よりお耳にかかりましょう。

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