テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第955話】「『金目』では見えない」 2014(平成26)年7月1日-10日

住職が語る法話を聴くことができます

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第955話です。
 東日本大震災が発生して半年後の9月10日、就任してわずか9日目で鉢呂経済産業大臣は、辞任に追い込まれました。福島第1原発を視察した折、「周辺の市街地は人っ子一人いない『死の街』だった」という失言があったからです。あれから3年。またしても福島第1原発をめぐっての問題発言がありました。除染廃棄物の中間貯蔵施設建設候補地の住民への説明会の後で、石原環境大臣は「最後は金目でしょ」と品位を欠く言葉を発したのです。
 その発言の3日後の6月19日に、私は福島の飯館村を視察する機会がありました。勿論まだ誰も帰還できないままの状態です。除染作業に携わる人たちが働いているだけです。村全体が放射能に覆われたのですから、気の遠くなるような除染なのです。例えば田んぼの除染の場合、表土を5センチ剥いで、そこに新しい土を入れて田んぼの状態にするそうです。しかし、実際耕作するとなれば、5センチより深く耕すでしょうし、山の除染はしていないのですから、山から流れ込んだ水でまた汚染されないとも限りません。
 国の行う除染は、その面積を稼ぐだけで、現実にそこに戻って生活するときに、安全に暮らせるのかという疑問が残ると、案内してくれた方は言います。それでも汚染土は黒い大きな土のうに入れられていくつもの置場に並べられています。それはそれは夥しい数です。そこは「仮の仮の置場」だそうです。いずれ別の仮置場へと運ばれるらしいのですが、いつどこに運ばれるのかの見通しは立っていません。
 故郷に戻りたい思いはどなたにもあるでしょう。しかし、戻ったとして原発事故以前と同じような普通の暮らしが営めるのか、という不安と恐れは明らかです。飯館村ばかりではなく、被災地の何処もが、その地域の力だけでは及ばない復興への厳しい道のりを抱えています。ここは国を挙げて取り組まなくてはならない問題です。ある意味で大臣の「正直な発言」が「国の本音」だとしたら、なんと情けない国に私たちは暮らしていることでしょう。
 お釈迦さまの教えに「八正道」があります。生きていくための8つの正しい道、教えのことです。その中に「正見」正しく見るというのがあります。漫然と眺めるのではなく、意識して観るということです。そこには智慧と慈悲が伴います。正しい判断ができる学びが必要ですし、苦しみや不安を抱える人に寄り添う気持ちがなければなりません。さらには想像力も求められます。
 現場に立ち、身体全体で観じて、想像してみて下さい。剥ぎ取られる前の土には、どれだけの人々の汗が沁み込み、命を育んだ喜びが詰まっていたかを。そして現在の汚染土のう一つひとつに詰まっているのは、そこに住んでいた人々の無念の想いなのです。「金目」では何も見えません。「心の目」で見れば、その恐ろしい光景の未来が見えてきます。
 それでは又、7月11日よりお耳にかかりましょう。

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