テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1094話】「万事を休息す」 2018(平成30)年5月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

1094.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1094話です。
 正式な医学用語ではないそうですが、「5月病」という言葉があります。4月に進学・入学・転勤などで、大きく環境が変わった人は、懸命にそれに順応しようとします。しかし、大型連休で緊張の糸が切れてしまうのでしょうか。この時期いわゆる「5月病」といわれる、環境の変化に適応できずに、精神的に不安定になる人が増えます。
 人は5月ばかりではなく、常に精神的肉体的な負担となるストレスを抱え込んでいます。ストレス指数をご存知ですか。結婚もストレスで50という指数です。これを基準として数値が少ないのは、夫婦喧嘩48、引越し47、子どもの受験勉強46、定年退職44、長期休暇35などがあります。一方最大のものは配偶者の死83、以下会社の倒産74、親族の死73、離婚72、病気・怪我62、300万以上の借金61と続きます。
 バラ色の人生の象徴のような結婚も、十分にストレスの対象になっています。日頃休んでストレスを解消したいと誰でも思うでしょうが、長期休暇となれば、先行きに不安を感じてしまうのでしょうか。立派なストレスの数値が示されています。
 さて、私たち曹洞宗の教えの根本は坐禅です。曹洞宗を開かれた道元禅師は、坐禅を勧めるために著わされた『普勧坐禅儀(ふかんざぜんぎ)』の中で次のようにお示しです。「諸縁を放捨し、万事を休息して、善悪を思わず、是非を菅すること莫(なか)れ」あらゆる縁や付き合いなどすべてを手放し捨てて、あれやこれや思い煩う心の活動を休んでみなさい。物事の善し悪しといった相対的な分別からも離れなさい。要するに何もかも捨てきって捨てきって、捨てるという意識すら捨ててしまいなさいということでしょうか。たいへん厳しくも、究極のところを説いています。
 坐禅をすればみんな、そのような境地になれますかと問われれば、正直答えに窮します。まずは坐禅をしてみてください。勿論何かを求めるために坐るという、「ため」が入ってはだめです。ここにも「諸縁の放捨」と「万事の休息」が必要です。本来の坐禅の在り様に思いを致すと、これまたストレスになってしまいそうですが・・・。
 たとえば、「体」という漢字から「一」を取ると「休む」という漢字になります。それをある人がこう言いました。「体が疲れたら一息つくよね 息抜きが必要だから 『体』から『一』息抜いて 『休』むんだね」。一年中大人も子どももストレスで疲れています。ちょっとしがらみを置いて、一息ついて体を休めてください。少し落ち着いたら、坐禅を組んでみませんか。そこは、一息どころか、万事が休息できる世界です。
 ここでお知らせ致します。4月のカンボジア・エコー募金は、181回×3円で543円でした。ありがとうございました。
 それでは又、5月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1317話】
「18歳と81歳」
2024(令和6)年7月21日~31日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1317話です。 「年齢7掛け説」というのがあるそうです。健康な現代人の年齢は、3割若く数えても大丈夫だということです。60歳なら42歳、70歳なら49歳、80歳なら56歳という風にです。50代・60代の頃はさもありなんと思っていましたが、さすがに70歳を超えると、8掛け・9掛けが現実に即している気がします。 さて、ある方から「... [続きを読む]

【1316話】
「不二山」
2024(令和6)年7月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1316話です。 東京都国立市では、駅前から伸びる通りを富士見通りと称しています。晴れた日には富士山を望めるからです。2年前にこの通りにマンション建設の話が持ち上がりました。地元では景観をめぐって反発したものの、建築基準法上の問題はないということで着工、先月完成しました。しかし引き渡しまじかにな... [続きを読む]

【1315話】
「一心松」
2024(令和6)年7月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます 元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1315話です。 東日本大震災で大津波を目撃した人は、「松林の上から黒い煙が出ているように見えた」と言っていました。最大波12.2㍍ともいわれる津波が、わが山元町の沿岸部の松林を根こそぎ破壊しました。松は養分や水分がなくても育ち、塩害や風にも強いことから、防風林・防砂林として用いられてきました。し... [続きを読む]