テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1300話】「B級法話」 2024(令和6)年2月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1300話です。

 宮城県でいえば「気仙沼ホルモン」、お隣り福島県は「浪江焼そば」、山形県は「冷たい肉そば」など、いわゆるB級グルメは各地で花盛りです。高級な食材で一流のサービスで提供されるA級グルメに対して、地元に人気があり、安くて庶民的な美味しい料理をB級グルメと称しています。

 ということでいえば、このテレホン法話もB級法話でしょうか。勿論法話にA級やB級の区別はありません。ただテレホン法話は、かしこまって聴いていただくような内容ではなく、短くて庶民的な面白い法話という意味でのB級法話です。

 その気軽さ故か、この度の法話で1300話になりました。昭和62年12月に前住職から、突然やってみなさいと無茶振りされたのが始まりです。以来37年間10日に一度つまり、月3回の更新を休みなく続けてきました。これはひとえにお聴き下さっているみなさまのおかげです。始めたばかりの頃は、10日間で数回しか電話が鳴りませんでした。少しずつ回数が増え、数十回になり、現在は数百回を数えます。年間では1万3千回を超えるまでになりました。

 さて、映画「独裁者」「ライムライト」「モダン・タイムス」などを手がけたチャップリンは、「あなたの最高傑作は?」と聞かれると、常に「次回作だ」と答えたと言います。一般的には毎回最高傑作を発表しているように思えますが、本人にとっては、次はもっとすごいものを世に出すのだという強い決意と並々ならぬ自信があったからなのでしょう。その上で「完璧以外に正しいものはない」というほどの完璧主義者でした。それほどの人でも、常に最高傑作には至っていないというのですから、恐れ入ります。

 私も「1300話のテレホン法話の中で最高傑作はどれですか」と聞かれたら、「次回作です」と言いたいところですが、まさかです。傑作云々はともかく、次回作を意識できないのです。一話終わるとまっさらになって何も残っていません。それほど余裕がないからです。裏金も中抜きもなく、正真正銘、法話の貯えがないのです。次の10日まで自分の命も含めて、世の中どうなるかわかりません。今回のテレホン法話を精一杯勤める、ただそれだけです。

 「吾れ常に此に於いて切なり」という禅の言葉があります。常に自分を無にして、今ここを精一杯生きるということです。切とは大切の切で、ひたすらなさまをいいます。それほど高い志を以ってテレホン法話を続けて来たわけではありませんが、余裕がないということは、何とか一言半句を絞り出そうと努力はします。余裕がないからこそ、切なる機会を与えられているのかもしれません。そしてB級グルメのように、みなさんに親しんいただけるB級法話をこれからも目指してまいります。B級にはもう一つの意味があって、それは私の名前「文明」のBです。

 それでは又、2月11日よりお耳にかかりましょう。

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