テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1276話】「親孝行と墓参り」 2023(令和5)年6月1日~10日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1276話です。

 「親孝行したい時に 親はなし さりとて墓に 布団もかけられず」まさにその通りです。親が死んで初めて、自分の至らなさに気づくことは多々あります。生きている時にこそ、布団をかけてあげる気遣いが必要と自戒を込めて言います。

 ところで、お墓に屋根をかけているところがあります。鹿児島を訪れた時に出会いました。鹿児島といえば桜島です。現在も年間数百回の噴火がある活火山です。鹿児島市からフェリーで15分。小学校が2校と中学校が1校あり、4千人が暮らしています。そこにお墓もあります。墓石そのものは普通の形ですが、それぞれのお墓に屋根が付いているのです。というより、小さなお堂の中に、墓石が建っている感じです。瓦屋根の本格的なものから、鉄骨と波板トタンで覆ったものなど様々です。当然火山灰から墓石を守るためです。火山灰は雪のように降るときもあると言います。雪なら溶けますが、火山灰はそうはいきません。

 屋根付きのお墓があるのは桜島だけではありませんでした。県の内陸の方にも見られました。そこは地区の墓地として整備されたところです。何十軒もの同じような大きさのお墓が、整然と並んでいます。そこの墓地全体がひとつの屋根で覆われているのです。火山灰からお墓を守るというよりは、雨風も含めた自然現象からお墓を守るという感じでした。室内にお墓があるようなものですから、どんな天候でも心置きなくお参りができます。事実、たいていのお墓には、きれいな花が供えられていました。聞くところによると、鹿児島県はお盆やお彼岸でもないのに、いつもお墓に花が手向けられているといいます。そして「日本一墓参りを欠かさない県」 なのだそうです。それを裏付けるように、生花店の数も日本一とか。

 さて、昨今「墓じまい」が話題になります。住まいの都合により墓地を移転したいとか、後継者がいないので、現在のお墓を処分して、自分たちは永代供養の墓にお世話になりたいなど、やむを得ないこともあります。中には、ちゃんと子どもがいるにも拘らず、その子どもに迷惑をかけたくないからと、変な忖度をする方がいます。子どもがお墓参りに来たり、お墓を管理するのはたいへんだろうから、自分たちの代でお墓をなくし、後は子どもの好きなようにしてもらいたいからというのです。

 親が親孝行の機会を奪ってどうするのでしょう。生前十分な親孝行ができなかったと思えば、お墓参りをすることが何よりの親孝行になります。ですから、お墓に布団や屋根をかけるほどでなくても、命日やお盆・お彼岸は勿論のこと、自分の誕生日にもお墓参りをしましょう。「今日この日に、私をこの世に産んでくれてありがとう」と、感謝を込めて花をお供えしてはいかがですか。

 それでは又、6月11日よりお耳にかかりましょう。



屋根付き墓所(桜島)

最近の法話

【1308話】
「花咲か爺さん」
2024(令和6)年4月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1308話です。 枯れ木に花を咲かせたのは「花咲か爺さん」、被災地の荒地に花を咲かせたのは「NPO法人三島緑の会」です。静岡県三島市の団体で、東日本大震災後の2013年から日本沙漠緑化実践協会の植樹活動に参加し、毎年山元町に桜を植樹して下さっています。一昨年はコロナ禍のためお出でいただけませんでしたが、苗木を送って下さいました。縁... [続きを読む]

【1307話】
「揺らがず大遠忌」
2024(令和6)年4月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1307話です。 たとえばですが、「正月の元旦に地震の避難訓練をします」と言われて、参加しますか?正月早々とんでもないと、誰でも思います。しかし無常なる自然は、正月とか人間の都合に忖度しません。能登半島では元旦にとんでもない地震が起きたのです。 実は能登半島は曹洞宗にとっては聖地です。曹洞宗に... [続きを読む]

【1306話】
「シッダールタ」
2024(令和6)年4月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1306話です。 「文殊丸」「行生」という2人の名前で、どなたかわかりますか。ヒントはどちらも曹洞宗に関わる方です。文殊丸は大本山永平寺を開かれた道元禅師、行生は大本山總持寺を開かれた瑩山禅師の幼名です。昔は幼い時に仮に名付ける名前や元服以前の名前を持つことがあったようです。 さて、4月8日は... [続きを読む]