テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1251話】「到彼岸」 2022(令和4)年9月21日~30日

住職が語る法話を聴くことができます



 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1251話です。

 安倍元首相の国葬に反対の声が大きくなっています。その理由の一つに、きちんとした法の定めがないからです。一方、春秋の彼岸の中日にあたる、春分の日と秋分の日は、祝日法によりその意義も定められています。春分の日は「自然をたたえ、生きものをいつくしむ」、秋分の日は「先祖を敬い、亡き人をしのぶ」となっています。正々堂々とお参りください。

 彼岸とは彼方の岸で、川の対岸を指します。仏教では悟られた仏の世界ということです。それに対して、こちらの岸は此岸といいます。迷っている凡夫つまり日常の私たちの世界です。「ヒガン」と「シガン」発音はかなり似ていますが、内容は全く違います。よく亡くなった人に、三途の川を渡るのに船賃として六文銭を持たせる、ということがあります。このたとえは彼岸にも通じることです。

 彼岸と此岸の間に流れている川は、人間の貪・瞋・痴という三毒の煩悩を象徴している三毒の川と言ってもいいでしょう。つまり、むさぼり・いかり・おろかさゆえに、迷いの流れの中で喘いでいるわけです。その喘ぎ方は次の6つに分けられます。出し惜しみをしてケチな生き方をする、決まりを守らずあたりに迷惑をかける、些細なことにも腹を立てイライラしている、隙あればさぼろうとする怠け癖、取り越し苦労や余計な心配をして落ち着かない、人を恨んだり妬んだりして正しい判断ができないということです。

 彼岸に渡るためには、その6つの喘ぎ方の全く正反対のことを修行すればいいのです。その6つの修行徳目を六波羅蜜といいます。波羅蜜とは、古いインドの言葉「パーラミター」に由来し、「到彼岸」と訳され、彼岸に到るということです。その6つは、布施(施すこと)・持戒(自ら律する)・忍辱(忍耐のこと)・精進(努力すること)・禅定(心の落ち着き)・智慧(正しい判断)です。この六波羅蜜がまさに六文銭です。

 この6つをそれこそ後生大事に心がけて、日日の生活に励むならば、徳が積み重ねられ、六文銭どころか、何十倍もの利息がつくことでしょう。そうすれば豪華客船クルージングで彼岸に渡ることができます。

 秋の彼岸は「先祖を敬い、亡きひとをしのぶ」ときです。どなたもお墓にお参りをして、お花やお線香などを供えてご供養なさることでしょう。その中でも最高の供養は、先に逝かれた方が喜んでくださるような、今日只今の生き方をすることだといわれます。豪華客船に乗れるような仏教徒として出世をした姿をお見せすれば、ご先祖様もきっとお喜びになることでしょう。それにしても、大方の国民が納得しかねる国葬騒ぎで、亡き人の追悼がないがしろにされているようで気の毒です。勿論、亡き人も喜んではいないでしょう。

 それでは又、10月1日よりお耳にかかりましょう。

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