テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第891話】「百日勤続」 2012(平成24)年9月21日-30日

住職が語る法話を聴くことができます

891.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第891話です。
 今年の秋分の日は、9月22日です。昭和54年(1979)が9月24日でしたが、33年ぶりで日にちが変わりました。そして、9月22日が秋分の日というのは、明治29年(1896)以来、実に116年ぶりなのです。現在の日本の最高齢者は115歳ですので、日本人の誰もが巡り合ったことのない秋分の日を、今年私たちは迎えました。地球が太陽を一周するのに、365日と約6時間かかるそうです。それで、4年に一度の閏年で調整するも、さらにずれが出て、今年のようになるようです。
 そして、9月22日がお彼岸の中日となって、これを過ぎると、ちょうど今年もあと百日となる因縁をいただきました。この区切りの良さをどう捉えましょうか。本山修行時代、「百日禁足」という掟がありました。足を禁ずると書きます。本山に入門して最初の百日間は、一切の外出が禁じられ、連絡通信も制限されるのです。外からの面会も禁じられますから、全く外部との接触を断たれた状態です。俗世間の価値観を一切捨てて、朝から晩まで、晩から朝まで、ただ仏道のためにだけの生活がありました。まるで牢獄にいるようだと思うほどでした。しかし、禁足が明けると、いつの間にか法衣(ころも)もぴったり身に付き、お経もそらんじられるようになっていました。あんなに辛いと思った「百日禁足」が、有り難い掟に思えてきたから不思議です。
 さて、今年もあと百日だから、みなさんも「百日禁足」をして、年明けて元旦には、禁足明けとして、心からおめでとうを言いましょうか。まさか、そこまでは言いません。ただ、何十年ぶりで秋分の日の日にちが変わろうとも、彼岸の心は千年万年変わらないということを再認識して下さい。即ち、春分の日、秋分の日の昼と夜の長さが同じであるように、偏らない心こそが、彼岸の心です。偏らないとは、自分中心にならないということでもあります。
 彼岸の教えの第一番に挙げられるのは、「布施」です。布施には「分け合う」という意味もありますが、自分中心の人はできないことです。ないものを上げることはできませんが、ちょっとしたお裾分けなら、どなたもできるのではないでしょうか。力があれば何かお手伝いをしてあげてもいいでしょう。何も持っていないという人だって、必ず持っているものは、笑顔と「ありがとう」という言葉です。持っていても表すことができない場合が多いというだけでしょう。
 そこで、今年の残り百日間は、「逆百日禁足」を行ってみては如何ですか。つまり、閉じこもっていないで、どんどんいろいろな人と会い、少なくとも一日一回は笑顔で「ありがとう」を言うことを自分の勤めとして続ける。百日間勤め続ければ、「百日禁足」ならぬ「百日勤続」となって、笑顔と「ありがとう」が習慣となり、来年一年間も笑顔で暮らすことができるのではないでしょうか。
 それでは又、10月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1310話】
「鬼より強い母の愛」
2024(令和6)年5月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1310話です。 昔インドに訶梨帝母(かりていも)という母がいて、千人もの子ども産みました。しかし、子を育てる栄養をつけるため、よその子を捕まえて食べるという鬼のような行いで、人々から恐れ憎まれていました。ある時、お釈迦さまは一計を案じ、彼女が一番可愛がっていた末の子を隠します。すると彼女は気も狂わんばかりに嘆き悲しむのです。お釈... [続きを読む]

【1309話】
「なぜ大人が生まれてこない」
2024(令和6)年5月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1309話です。 「生まれてくるのはなぜ赤ちゃん」という郁人君(8)の新聞投書を紹介します。おばさんに子どもが生まれて、抱っこさせてもらい、そこで感じたことを書いています。「ちっちゃいけれど、大人と同じものがいっぱいありました。赤ちゃんは今のぼくとちがい、やりたいことを泣いて知らせることしかでき... [続きを読む]

【1308話】
「花咲か爺さん」
2024(令和6)年4月21日~30日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1308話です。 枯れ木に花を咲かせたのは「花咲か爺さん」、被災地の荒地に花を咲かせたのは「NPO法人三島緑の会」です。静岡県三島市の団体で、東日本大震災後の2013年から日本沙漠緑化実践協会の植樹活動に参加し、毎年山元町に桜を植樹して下さっています。一昨年はコロナ禍のためお出でいただけませんで... [続きを読む]