テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第761話】「寝釈迦仏」 2009(平成21)年2月11日-20日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第761話です。
 仏像はたいてい立っているか座っているお姿ですが、中には横たわっているものもあります。昨年秋に縁あって、徳本寺に安置された「寝釈迦仏(ねしゃかぶつ)」がそうです。お釈迦さまが右手を肘枕にして横たわっています。全長90cmほどの木造仏で、お顔を見ると微かにほほ笑んでいるようでもありますが、別にお昼寝で楽しい夢を見ているわけではありません。実は「お涅槃(ねはん)」つまりお亡くなりになったお釈迦さまのお姿を現わした「涅槃仏」なのです。
 2月15日はお釈迦さまがお亡くなりになられた日ですので、徳本寺でも、そのときの様子を描かれた「涅槃図」の掛け軸を本堂に掲げて、お釈迦さまの遺徳を偲びます。涅槃仏のお釈迦さまが頭を北に、顔を西に向けています。その周りには大勢のお弟子さんたちが、お釈迦さまの死を嘆き悲しんでいます。更には、大きいものは白い象から、小さいものは蝸牛(かたつむり)まで、あらゆる動物も泣いているのです。しかし、ひとりお釈迦さまだけが、ほほ笑んでいます。このように、涅槃仏はどれも穏やかなほほ笑みを湛えています。
 亡きお釈迦さまのほほ笑みは何を伝えているのでしょうか。「80年の生涯をかけて、あらゆる人々に教えを説き、安らぎの世界へ導いてきた。もはや想い残すことはない。私が死んでも、私の教えは残る。みんなはその教えを灯として、それぞれ精進してくれ」。そんな思いが込められているのでしょう。
 インド人の言葉に「誕生のときには、おまえが泣き、全世界は喜びに沸く。死ぬときには、全世界が泣き、おまえは喜びにあふれる。かくのごとく、生きることだ」とあります。どんな人も笑いながら生まれてはきませんし、涙ながらに迎えられる誕生ではあまりに悲し過ぎます。更には、周りの人々から死んでよかったなどと喜ばれ、自分ひとり寂しく涙ながらに亡くなっていくようなことがあったとしたら、生まれてきた意味がありません。
 安らかにこの身を横たえて、やるべきことはすべてやり終わった、何ら悔いを残すことはないと言って、ほほ笑みの中で手を合わせられるようと願いたいものです。人生に寝釈迦仏を気取って、肘枕で昼寝などをしている暇はありません。うたた がい(害)があるといいます。風邪などひかぬよう、いつも目覚めて、「害」のない生き方をしましょう。
 ここでご報告致します。1月のカンボジア・エコー募金は377回×3円で1,131円でした。ありがとうございました。
それでは又、2月21日よりお耳にかかりましょう。
CA2E6AM2.jpg 寝釈迦仏

最近の法話

【1310話】
「鬼より強い母の愛」
2024(令和6)年5月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1310話です。 昔インドに訶梨帝母(かりていも)という母がいて、千人もの子ども産みました。しかし、子を育てる栄養をつけるため、よその子を捕まえて食べるという鬼のような行いで、人々から恐れ憎まれていました。ある時、お釈迦さまは一計を案じ、彼女が一番可愛がっていた末の子を隠します。すると彼女は気も狂わんばかりに嘆き悲しむのです。お釈... [続きを読む]

【1309話】
「なぜ大人が生まれてこない」
2024(令和6)年5月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1309話です。 「生まれてくるのはなぜ赤ちゃん」という郁人君(8)の新聞投書を紹介します。おばさんに子どもが生まれて、抱っこさせてもらい、そこで感じたことを書いています。「ちっちゃいけれど、大人と同じものがいっぱいありました。赤ちゃんは今のぼくとちがい、やりたいことを泣いて知らせることしかでき... [続きを読む]

【1308話】
「花咲か爺さん」
2024(令和6)年4月21日~30日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1308話です。 枯れ木に花を咲かせたのは「花咲か爺さん」、被災地の荒地に花を咲かせたのは「NPO法人三島緑の会」です。静岡県三島市の団体で、東日本大震災後の2013年から日本沙漠緑化実践協会の植樹活動に参加し、毎年山元町に桜を植樹して下さっています。一昨年はコロナ禍のためお出でいただけませんで... [続きを読む]