テレホン法話
~3分間心のティータイム~

第748話「"いずくない"話」 (2008.10.1-10.10)

4.jpg「うっしょまえ、けっちゃにきてで、いずいごだ」「一丁前に、警察に来たけど、まずいことになった」と言っているのではありません。たとえばシャツなどを、「後ろ前に着ていてしっくりこないよ」と言っているのです。
 これは、徳本寺の彼岸会法要の折、東北放送アナウンサーの藤沢智子さんをお招きし、「残しておきたいおらほの言葉」という講演をしていただきましたが、その中でご紹介いただいた「おらほの言葉」です。藤沢さんは、仙台弁を使うことにより、子どもからお年寄りまで、楽しい会話で豊かなコミュニケーションを築きましょうと、ラジオ番組などでも、広く呼びかけています。
 そして、自ら「『いずい』を全国に広める会」の会長を名のり、仙台弁の代表的な言葉
「いずい」の普及に努めています。よその人には、チンプンカンプンな言葉ですが、私たち地元の者にとっては、実に重宝な言葉です。靴を反対に履いたときや、目にゴミが入ったときの、あのなんともしっくりこない感じを「いずい」の一言で表現できるわけです。
 古くは室町時代、京都で使われていた、「ぞっとする、おそろしい」という意味の「えずい」という言葉に通じるそうです。これは、心の持ちようを表わすときも使われます。お互いの気持がギクシャクして、しっくりこないとき、「いずい」となります。
 そして「いずい気持」の一番の原因は、自分の「我」を通そうとするところにあるのかもしれません。自分の思い通りにならなければ、どうしても気持が治まらないということになります。では、「いずくない心もち」とは何でしょう。
 たまたま10月5日は、禅の教えをインドから中国に伝えられた達磨大使の命日「達磨忌」
です。その達磨大使が中国で、「仏教で説く最高の境地は何ですか」と問われ、「廓然無聖(かくねんむしょう)」と答えられました。簡単に言えば、カラリと晴れわたり、一片の雲もない秋空の如く、何ら執着のない無心の境地のことです。
 私たちの心は、嬉しいにつけ、悲しいにつけ、相手によっても、様々に移り変わります。いつもさわやかな秋空のようにはいきません。その都度「いずい」思いをします。せいぜい仙台弁を駆使して、常日頃のコミュニケーションを深めましょう。"おしょすがらないで"。
エッ「和尚さんたちがどうして泣くんですか」って?いやいや違いますよ。"おしょすがらないで"とは、恥ずかしがらないでということです。
 それでは、又10/11よりお耳にかかりましょう。(「行事のご案内」参照)

最近の法話

【1310話】
「鬼より強い母の愛」
2024(令和6)年5月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1310話です。 昔インドに訶梨帝母(かりていも)という母がいて、千人もの子ども産みました。しかし、子を育てる栄養をつけるため、よその子を捕まえて食べるという鬼のような行いで、人々から恐れ憎まれていました。ある時、お釈迦さまは一計を案じ、彼女が一番可愛がっていた末の子を隠します。すると彼女は気も狂わんばかりに嘆き悲しむのです。お釈... [続きを読む]

【1309話】
「なぜ大人が生まれてこない」
2024(令和6)年5月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1309話です。 「生まれてくるのはなぜ赤ちゃん」という郁人君(8)の新聞投書を紹介します。おばさんに子どもが生まれて、抱っこさせてもらい、そこで感じたことを書いています。「ちっちゃいけれど、大人と同じものがいっぱいありました。赤ちゃんは今のぼくとちがい、やりたいことを泣いて知らせることしかでき... [続きを読む]

【1308話】
「花咲か爺さん」
2024(令和6)年4月21日~30日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1308話です。 枯れ木に花を咲かせたのは「花咲か爺さん」、被災地の荒地に花を咲かせたのは「NPO法人三島緑の会」です。静岡県三島市の団体で、東日本大震災後の2013年から日本沙漠緑化実践協会の植樹活動に参加し、毎年山元町に桜を植樹して下さっています。一昨年はコロナ禍のためお出でいただけませんで... [続きを読む]