テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1235話】「立派な悪人」 2022(令和4)年4月11日~20日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1235話です。

 ある和尚さんのところに、檀家さんが悩み事相談に来ました。「うちの家族は、争いごとが絶えなくて困っています。どうしたらいいでしょう」「お宅では良い人ばかりいるから、争いがあるのでしょう。悪人がいれば、そんなことはないはずです」「ハッ?」「私は正しい、悪いのはあなただ、という自分が良い人だと思っている人ばかりいると、必ず争いになります。私が悪いという悪人がいれば、丸くおさまります」

 自分が正しいとなれば、どこまでもその主張を通そうとしてしまいます。Aという正しさや、Bという正しさがあって、自分の方が絶対正しいとなれば、争うしかなくなります。戦争を題材にした映画にこんなセリフがありました。「答えが一つなら、紛争など起きないよ」。自分が悪いとは言いたくないものです。非を認めることには勇気がいります。ロシアのウクライナ侵攻には、どれほどの正しさがあるのでしょうか。ごめんなさいの一言なら、3歳の子どもでも言えます。本物の悪人とは、謝ることができない人を指すのでしょう。

 さて、お釈迦さまは今から2500年ほど前の、4月8日にお生まれになりました。生まれてすぐ、7歩あるかれて、「天上天下唯我独尊」と叫ばれました。勿論これはお釈迦さまの生涯や教えを象徴的に示したお話でしょう。7歩は6プラス1の意味が含まれています。つまり六道という迷いの世界を超えて、7歩目を踏み出しなさいということです。2つも3つも正しさを抱えて迷う事しきりの人生です。ごめんなさいをためらう程、謝りにくくなります。気づいたら迷わず謝ることです。それでこそ立派な悪人です。

 そして「天上天下唯我独尊」を、間違って解釈して、この世で自分ほど偉い者はいないのだから、何をやっても許されるなどと思いあがってはいけません。ほんとうの唯我独尊とは、「唯だ、我、独りとして尊し」ということです。自分の命はふたつとないのだから、これ以上尊いものはありません。世界中の誰もがそう思っているし、そう思える世の中でなければなりません。そして、たった一つの命とはいえ、数えきれない命の関りの中から生まれたものです。その命が失われた時に、どれだけの人が悲しむかということに思いを馳せることができる人こそ、ほんとうに偉い人です。

 お釈迦さまは『発句経』の中で次のようにお示しです。「己が身にひきあてて、殺してはならぬ、殺さしめてはならぬ」。何事も我がこととして判断するなら、自ずと争いごとはなくなるはずです。想像してみてください。自分が殺されることを、自分の家族が殺されることを。とても堪えられません。己が身にひきあてて、本物の悪人ではなく、立派な悪人になりましょう。そんな悪人ならお釈迦さまも、天上天下誓ってお咎めはしないでしょう。。

 ここでお知らせいたします。3月のカンボジアエコー募金は、562回×3円で1,686円でした。ありがとうございました。

 それでは又、4月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1251話】
「到彼岸」
2022(令和4)年9月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1251話です。 安倍元首相の国葬に反対の声が大きくなっています。その理由の一つに、きちんとした法の定めがないからです。一方、春秋の彼岸の中日にあたる、春分の日と秋分の日は、祝日法によりその意義も定められています。春分の日は「自然をたたえ、生きものをいつくしむ」、秋分の日は「先祖を敬い、亡き人をしのぶ」となっています。正々堂々とお... [続きを読む]

【第1250話】
「寛恕なる家族葬」
2022(令和4)年9月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1250話です。 「惜別の機会を近所の人にも」という新聞投書がありました。75歳のAさんが亡くなったとき、その息子さんに「近所の人には葬儀に来て頂かなくて結構です」とBさんは言われました。Bさんは独り暮らしのAさんの通院の送迎をしていたほど親しかったのです。身内だけの葬儀もいいが、親が頼りにして... [続きを読む]

【第1249話】
「日本一からの招待」
2022(令和4)年9月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1249話です。 地元の新聞「河北新報」の名前は、戊辰戦争に敗れた東北地方を軽視する言葉「白河以北一山百文」に由来します。明治30年創刊の河北新報は、この言葉を逆手に取って、東北復権の志を示そうと、敢えて「河北」と名付けました。 高校野球界においても、「東北地方は一山百文」的な見方をされてきた... [続きを読む]