テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1181話】「震災遺構中浜小学校」 2020(令和2)年10月11日~20日
住職が語る法話を聴くことができます

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1181話です。
東日本大震災が起きた時、私は檀家総会を終えた兼務する徳泉寺本堂で後片付けをしていました。あまりの揺れに役員さんと一緒に、履物も履かずに外に飛び出しました。一方町内で徳泉寺と同じように海から400メートルの中浜小学校では、校庭にいた児童を校舎2階に集めました。急ぐあまり、その児童たちは上靴を履いていませんでした。テレビでは10分後に高さ6メートルの津波が来るとのこと。内陸部の避難所までは子どもの足で、20分以上かかります。校舎内に留まることを決断します。
しかしその後、大津波情報は高さ10メートルと報じました。2階でも危険な状況です。その時校長先生は迷わず屋上への避難を選びます。鉄筋コンクリート2階建ての校舎の屋上には、屋根裏倉庫があったのです。児童、先生、地域住民など90人の避難場所はそこしか考えられません。午後3時50分ごろ、2階天井に達する約10メートルの第1波が校舎を襲いました。更に20メートルくらいの第3波、第4波が近づいてきました。もう駄目だと諦めかけた時、第1波、第2波の引き波とぶつかり、勢いが抑えられ、屋上への到達をまぬがれました。そして校長先生は、簡潔にこう伝えます。「最大の危険は去りました。でも、今夜はここに泊まります。食べ物はありません。水もありません。とても寒くなります。でも朝までがんばろう。あたたかい朝日は必ず昇るから」
この中浜小学校が、県南唯一の震災遺構として、9月26日から一般公開されました。切り妻屋根の屋上屋根裏倉庫は、真ん中はそれなりの高さはあるものの、端は極端に狭くなります。照明設備はなく、床はコンクリートです。あの夜の気温は零下でした。倉庫にあった学芸会の小道具や段ボールで寒さをしのいだそのままの状態で残されています。90人の中には小学1年生もいました。どれほどの恐怖と不安を感じたことでしょう。それでも、翌朝ほんとうにあたたかい朝日が昇り、全員がヘリコプターで無事救助されたのです。
校長先生は言います。「あの時の判断が正しかったのか今でもわからない。備えと運が重なった」。たまたま大震災の2日前にも震度3の地震があり、0.5メートルの津波注意報が出ました。学校では現実に避難行動をとっています。そして翌日、改めて児童に対して、命を守る行動を訴えています。先生たちも、避難手順等の再確認をしていました。その備えが、大震災の避難に反映されたのでしょう。それにしてもリーダーの毅然とした態度と揺るがぬ決断が、90人の心をひとつにして、奇跡を呼び込んだかのようです。
校長先生はみんなの最後になって、屋上への狭く急な階段を昇る時、「屋上に行けば、もう他に逃げる場所はない。生き延びるしかない。この階段を降りられるのは生きている時だ」と覚悟したそうです。覚悟の反対は迷いです。迷いの原因は準備不足です。私も屋根裏倉庫に入り、その空気を肌で感じた時、備えを怠ってはいけないことを実感しました。「備えなければ、迷いあり」です。
ここでお知らせいたします。10月25日(日)午後2時より、第14回テレホン法話ライブを開催いたします。ゲストはすこっぷ三味線の若葉舞さん。入場無料です。また9月のカンボジアエコー募金は、162回×3円で486円でした。ありがとうございました。
それでは又、10月21日よりお耳にかかりましょう。
(屋根の右側の瓦が津波によって破損)

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