テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1139話】「日本列島人」 2019(令和元)年8月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます

 
 

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1139話です。

 「日本人」とは言わず、「日本列島人」という言い方に興味が湧きました。日本列島に最初に住んだ日本列島人は、どうやって海を渡ってきたかということを研究している人たちがいます。大陸から日本列島に来た経路としては、北海道、対馬、沖縄の3ルートが考えられるそうです。

 今から3万年以上前の旧石器時代の話です。日本国内で発掘されている旧石器時代の人骨は、静岡県浜松市の断片的な一体分を除き、すべて沖縄県内です。DNA解析で台湾や東南アジアの遺伝子型と共通することが判明しています。3万年以上前に南方から沖縄へ航海してきたという説が注目されています。そこで国立科学博物館による「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」では、7月7日に実験航海を行いました。

 3万年前の技術のみで、台湾から沖縄へ向けて航海できるかを検証するのが目的です。石おのなどの道具だけでスギの丸太をくりぬき、舟を作りました。旧石器人になりきり、時計やコンパス、GPS機器などは持たず、風や太陽、星を頼りに航海するというものです。男4人女1人の漕ぎ手が乗り込み、台湾東海岸から約200キロ離れた与那国島を目指しました。こうして潮の流れにも乗り、45時間かけて島に辿り着き、航海は成功しました。ただこれで完全に旧石器人が海を渡ってきたという証明がなされたわけではありません。あくまでも不可能ではないということを示すものだということです。

 確かにその昔日本列島に、どこかの何人かの男女が偶然ではなく、何がしかの意思・目的をもって辿り着き、住み着くようになったのでしょう。非凡なる勇気を持った彼らが、日本列島人となり、3万年の歳月を経て、1億2744万人の日本人がいる現在の日本列島になったと思うと、壮大なロマンを感じます。

 さて、お盆の季節。日本人のルーツを求めて、3万年前まで遡って研究している人たちがいるのです。せめて私たちは、30年前や50年前の自分の先祖に思いを馳せてみませんか。この世に突然降って湧いてきた人などいないのです。少なくとも両親の縁を借りて、命をいただき、様々な人や物に支えられ、現在に至っています。勿論両親にはさらに4人の親がいなければなりません。そのまた先には、8人の親へと続きます。最終的には日本列島人という何人かに行き着くことになるのかもしれません。

 お盆は日本列島のお墓が一番賑わう時です。自分の先祖だけでなく、これまで日本列島を築いてきたすべての人のおかげの上に、私が存在していると思ってみませんか。そうすればお盆に非凡な人生を目指してみようという気になるかもしれません。

 ここでお知らせいたします。7月のカンボジア・エコー募金は、145回×3円で435円でした。ありがとうございました。

 それでは又、8月21日よりお耳にかかりましょう。

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