テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第818話】「暑さを許す」 2010(平成22)年9月11日-20日
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第818話です。
ある若い女性からいただいた残暑お見舞いのはがきに「今年の果物はどれも甘さが抜群らしいです。たくさん食べて暑さを許してあげようと思います」と書いてありました。みなさんは何を以って、今年の暑さを許せますか。たいていの人は許せる何ものもなく、暑い暑いを連発して、その言葉が更に暑さを増幅させていたかもしれませんね。
「心頭を滅却すれば火も自(おのずか)ら涼し」という禅語があります。もとは中国の漢詩の一節ですが、わが国で特に有名になったのは、甲斐の国の恵林寺(えりんじ)の快川禅師(かいせんぜんじ)によってです。戦国時代、武田信玄は快川禅師を恵林寺に迎え、篤く帰依していました。しかし、信玄没後、武田家は衰亡していきます。かねて快川禅師の徳風を慕っていた織田信長が、快川禅師を自分のところに礼を尽くして迎え入れようとしました。ところがにべもなく断られます。自尊心を傷つけられた信長は、恵林寺を焼き討ちにします。快川禅師以下一山の僧百余人が山門楼上に追い上げられ、四方より火攻めに遭います。そんな中にあっても、さすが快川禅師以下の禅僧は、覚悟を決め、泰然自若として坐禅をしていたと言います。このとき快川禅師が唱えたのが「心頭を滅却すれば火も自(おのずか)ら涼し」という一句です。
この句の前に「安禅は必ずしも山水を須(もち)いず」という一節があるように、坐禅の境地を説いたものです。坐禅は特に涼しい山中や水辺を選ぶ必要はなく、日陰もない炎暑のところででも、心を無にすれば、暑さに煩わされることなく、火もまた涼しく感じることができるというのです。暑さ寒さは勿論のこと、あらゆる是非得失、恨み辛み、煩悩妄想などを断ち切って無心に徹するならば、艱難辛苦を厭わなくなるという、究極の無心の大切さを示しています。
快川禅師はまさに炎熱の暑さを感じないばかりか、信長に対する「許しの心」さえ抱いていたのではないかと思われます。そして、信長はといえば、恵林寺焼き討ちの2ヶ月後の天正10年(1582)6月2日に、本能寺において、炎の中でまさに熱き生涯を終えました。その時信長は、快川禅師に心から許しを懇願していたかもしれません。
火を涼しく感じられるような快川禅師の境地を、誰でも持ち得るものではありません。ただ、嫌なことを愚痴ってばかりいても何の解決にもなりません。私は今年の暑さを、この身を以って許してあげたい気持ちです。暑さを存分に感じられる命があってよかったと。「暑い暑いというは贅沢 冷たくなる身のことを思えば」。十分に贅沢な夏を過ごすことができて今は幸せと思えます。
ここでご報告いたします。8月のカンボジア・エコー募金は、262回×3円で786円でした。ありがとうございました。
それでは又、9月21日よりお耳にかかりましょう。
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