テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第782話】「石にして拝む」 2009(平成21)年9月11日-20日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第782話です。
 これから新たにお墓を準備しなければならない人のお墓に対する考え方には、三通りあるようです。ひとつは、自分がやがて行くところだから、きちんとしたものを造り、自分の目で確かめておきたいという方。一方、早々にお墓を造ってしまうと、いかにも準備が整い過ぎて、自分が早く死んでしまうようだからと、お墓のことは先送りする方。それから、自分でお墓を造ることは、吝(やぶさ)かではないが、敢えて、手をかけず、次の代に託するという方です。
 「生きた親拝まず 石にして拝む」とい言葉があります。親が元気でいる時は、その有難みなど理解しようともせず、むしろ、親の言うことはうるさくてたまらないと、親に対して背を向けることもあるでしょう。しかし、親が亡くなってしまうと、そのうるさい小言すら聞くことができなくなります。生前の我ままを詫びながら、ほろ苦い思いで墓石の下に眠る親に対して、手を合わせることになります。
 生きている時から、手を合わせてもらえる親とは、墓石のことでいえば、自分が入るお墓は、自分で整えて、子どもには心配をかけない人でしょうか。確かに、子どもがやるべきことを親がやっていってくれれば、子どもは負担が少なく、有り難いと思い、手を合わせるかもしれません。でも、手を合わせる基準が、墓石の負担のあるなしではちょっと寂しすぎます。
 そうなると、墓石のことは子どもに任せてしまえば、子どもは親のためとはいえ、自分で建てた墓石なら、愛着もあり進んで手を合わせるかもしれません。さて、自分の入るお墓は、自分で造ったらいいのか、次の者に任せたらいいのか、大いに迷うところです。
 でも、ご安心ください。墓石も含めて、仏塔を建てることは、お釈迦さまの時代から、たいへん供養になることとされてきました。ですから、どなたでも毎年でも建てていいものなのですが、そうもいきません。その代わりになるのが、塔婆です。お墓のある人もない人も、ご先祖さまは必ずいらっしゃいます。お彼岸などに塔婆を建てて、ご先祖さまの参りをしては如何ですか。はか(計り)知れない功徳があります。何よりの功徳は、その姿を子どもたちはきっと見ているということです。その姿がなければ、石になっても拝んでいただけないかもしれません。
 ここでご報告いたします。8月のカンボジア・エコー募金は、109回×3円で327円でした。ありがとうございました。
それでは又、9月21日よりお耳にかかりましょう。
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