テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第881話】「マイク作務」 2012(平成24)年6月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

20120611.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第881話です。
 震災からわずか11日目の、昨年の3月22日に山元町に災害臨時FM局が立ち上がっています。元東北放送のアナウンサーとはいえ、高橋厚さんの的確な判断と行動力の成せる業です。山元町の名産のりんごと戦後復興のシンボルとなった「りんごの唄」を思い、「りんごラジオ」と名付けられました。実は翌日の23日に私はそのりんごラジオに出演していたのです。
 その朝、用事があり山元町役場に出かけました。玄関ロビーは臨時の受け付けが設けられ、混乱の中、役場職員が対応していました。立っていると、以前から存じ上げている高橋厚さんに声をかけられ、ロビーのところにセットされた放送設備が載ったテーブルに招かれ、突然のインタビューです。事情が呑み込めないで、尋ねられるままに答えていました。
 兼務住職をしている沿岸部にあった徳泉寺が、跡形もなく流され、砂浜になっていることや、犠牲者もたくさんいて、連日遺体安置所や火葬場での供養のお勤めに追われていることなどを、お話した記憶があります。正直言って、その場所が放送局という感じはしませんでした。何も立派なスタジオから流すばかりが放送ではないということを理解したのは、しばらく経ってからのことでした。人々が混乱している時こそ、どんな状態であれ、的確な情報を提供するという使命感が、りんごラジオにはあったのです。
 その後、何度かりんごラジオに出演する機会があり、今年になってからは、震災一周忌を期に、月一回位の割合で出演して欲しいとの依頼がありました。原則として、毎月第一水曜日の午前11時から30分間、「文明和尚の作務タイムズ」という番組を放送することになりました。サムタイムズは英語で時々という意味があります。つまり、月一回程度時々何かを喋るというほどの番組タイトル名です。もう一つには、「サムタイムズ」の「サム」は、我々禅宗では、「作る」「務める」と書く「作務」があり、それに掛けています。
 「作務」とは、掃除や何かの作業をすることを指します。掃き作務・拭き作務など、坐禅をすることやお経を誦むことと同じように、修行の中でももっとも大事なことです。それらは、とかく辛いことの代名詞のように思われるかもしれません。しかし毎日続けることにより、しないと落ち着かない、せずにはいられないという意識が生まれれば、しめたものです。そんな「作務」の話も時々していきます。作務の「務める」という字には、困難をおかしてもやろうと力を尽くすという意味があります。玄関ロビーから始まったりんごラジオも、幾多の困難を乗り越え、休まず今日まで続けたマイク作務があって、今や明るい声で「りんごの唄」を口ずさむまでになっています。
 ここでご報告致します。5月のカンボジア・エコー募金は、142回×3円で426円でした。ありがとうございました。
 それでは又、6月21日よりお耳にかかりましょう。

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