テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第893話】「鉄鉢の暑さ」 2012(平成24)年10月11日-20日
住職が語る法話を聴くことができます
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第893話です。
漂泊の俳人といわれた山頭火。明治15年山口県防府市に生まれ、44歳の時出家得度し、曹洞宗の僧侶になります。しかし、住職となることはなく、生涯一乞食僧として、諸国を放浪し、59歳で四国松山市にてその一生を終えます。昭和15年10月11日のことです。こよなく酒を愛し、数多くの俳句を残しました。俳句といっても自由律俳句で、花鳥風月を詠むというよりは、自分の内面を吐き出すかのような句や、人間の本質を突く句などが、多くの人の共感を得てきました。
その山頭火ゆかりの松山市のNHKテレビ局より取材がありました。山頭火特集の番組を放映するに当たり、山頭火を語る一人に、たまたま選ばれたのです。被災地に住む者として、今この時に、山頭火という人物をどう捉えるのか、また今一番伝えたい句はどれかを聞きたいようでした。もし山頭火がこの被災地に来たとしたら、何をするでしょうかと言われ、ひたすら歩きながら、お経を挙げて、祈り続けたのではないでしょうかと答えました。
そして、俳句としては「鉄鉢の暑さをいただく」を挙げました。鉄鉢とは、鉄製のお鉢のことで、行乞をするときに持ち歩き、その中に、金銭や食べ物を喜捨していただきます。行乞は何よりの修行です。墨染めの衣で、網代傘に手甲脚絆、鉄鉢など必要最小限度のものしか持ちません。お経を挙げるなど、仏法を施し、それに対して、なにがしかのお布施をいただくばかりです。そこで大事なことは、選り好みをしない、すべていただくということです。多いとか少ないとかいう執着心を捨てます。また、いただけなくても、決して不平を言うことなく、それもご縁として受け止めることなのです。
今年の夏のような炎天下を、山頭火も黙々と歩いたことでしょう。何もあげてもらえない空の鉄鉢は、その暑さだけが身に堪えていたことでしょう。しかし、それも有り難くただいただくというその一句は、行乞僧の真骨頂を言い得ています。これを、この度の大震災に当てはめるならば、何ら選択の余地もなく、突然襲ってきたこの災害。鉄鉢の暑さをいただくように受け入れなければなりません。
とは言っても、昨年のあの惨状の最中に、そんな喩えをできるわけがありません。山頭火の行乞僧として何もないというのと、災害で何もかも奪われてしまったのでは、明らかに状況が違います。しかし、私たちが生きるということは、選べることと選べないこと、自分の意志でできることと、できないこと、それらを納得していくことではないでしょうか。
「鉄鉢の暑さをいただく」という山頭火の納得は、まさに彼の生きざまでした。今被災地にあって、私たちは、何をいただき、何を捨てられるのか。復興という志を込めた鉄鉢を持って、山頭火以上に歩いて行かなければなりません。
ここでご報告致します。9月のカンボジア・エコー募金は、107回×3円で321円でした。ありがとうございました。
それでは又、10月21日よりお耳にかかりましょう。
最近の法話
【1330話】
「茶室とサンドウィッチマン」
2024(令和6)年12月1日~10日
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1330話です。 「大條家茶室には僕の祖父・祖母が新婚の折に泊まったりもしたようです」これはサンドウィッチマン伊達みきおさんが、先月24日に行われた大條家茶室の修復完成記念式典に寄せたお祝いメッセージの一部です。 サンドウィッチマンがどうして大條家茶室につながるのでしょう。実は歴史上伊達政宗は2人います。仙台藩の独眼竜政宗は伊達... [続きを読む]
【1329話】
「色褪せない思いやり」
2024(令和6)年11月21日~30日
住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1329話です。 個人的な話で恐縮ですが、11月21日で74歳になりました。古稀と喜寿の中間で、特別な意味はありません。またこのテレホン法話を始めて、今年で37年になります。これも40年にも満たず、特別感はありません。しかし、37年の倍が74年ということに気づきました。つまり我が半生はテレホン法... [続きを読む]
【1328話】
「お舎利」
2024(令和6)年11月11日~20日
住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1328話です。 新米が出ると真っ先に、お寺に持ってこられ「ご本尊のお釈迦さまにお供え下さい」という檀家さんが何人もいます。ほんとうに有り難いことです。そのお下がりをいただく度に、「銀シャリ」を実感します。 シャリは寿司屋の符丁ですし飯のことです。お釈迦さまの遺骨はインドの言葉「シャリーラ」を... [続きを読む]
テレホン法話
~3分間心のティータイム~
- 2024年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2023年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2022年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2021年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2020年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2019年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2018年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2017年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2016年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2015年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2014年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2013年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2012年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2011年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2010年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2009年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月
- 8月
- 7月
- 6月
- 5月
- 4月
- 3月
- 2月
- 1月
- 2008年
- 12月
- 11月
- 10月
- 9月