テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第889話】「ひとつの心」 2012(平成24)年9月1日-10日
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第889話です。
私が兼務住職をしている徳泉寺は、東日本大震災の大津波で、伽藍も仏具もすべて流されてしましました。その地域の檀家さんが74人も犠牲になり、ほとんどの家屋も流出、災害危険区域となり、住まいすることができなくなりました。しかし、本尊様だけは奇跡的に発見されました。どんな災難に遭っても、人々の心の支えになろうとする一心で踏み止まったものと信じて、「一心本尊」と名付けました。
ほんとうの故郷の復興を思うとき、人々の心の拠りどころとなる祈る場所が必要です。寺を再建するとは、祈るところを必要とする人々の心の再建にもつながります。そこで、徳泉寺では全国のみなさまに呼びかけ、はがきに一文字を写経をしていただき、その功徳により、復興を目指しています。将来、祈る処が再建され、一心本尊様が安置された暁には、その下に納経して、永代に亘ってお名前を残し、ご供養申し上げます。
般若心経などの、お経一巻を写経するのは、それはそれでたいへんな功徳です。しかし「一文字」ならではの功徳があります。それは、目の前のお経をただ写すのではなく、文字を選ばなければならないということです。そこにその人自身の思いがはっきり表れます。これまで300枚を超えるはがき写経が納経されました。願いを込めて書かれた感じがよくわかります。意外なことに、自分の名前の一文字を書いている方が目立ちます。名前には幸せを願ったり、良き人生を送られるようにという思いが込められています。ですから、復興という将来を思えば、われの名そのものが「一文字」にふさわしいということにもなるのかもしれません。
それでも、一番多い字は何と言っても「心」です。2割近くの方が書いています。一心本尊様を想い、一心に写経ということになると、「心」という字になるのも当然のことでしょうか。「心」という漢字は、心臓を描いた象形文字だそうです。私たちの命の文字通り中心にあるものと思えば、重みのある字です。そして、「さんずい」に「心」と書いて「沁みる」という字になりますが、血液を血管のすみずみまでしみわたらせる心臓の動きからきているといいます。なるほど「心を通わせる」というのは、うわべだけではなく、その人となりを、すべて預ける、あるいは受け止めるということになるでしょうか。
そして「はがき一文字写経」の、イメージソングもできました。作詞は私ですが、作曲と歌は「歌う尼さん」こと、やなせななさんです。題して『ひとつの心』。徳泉寺のお盆供養施餓鬼会において、初めて披露されました。「ひとつの心がその始まり 心をひとつに 命をつなぐ」と力強く歌っています。一心本尊というひとつの心があったから、復興へのスタートを切ることができました。その心を全国すみずみに沁みわたらせ、みなさんの心をひとつにして、復興の形を築こう。また新たな想いで、故郷で生きていきたいという願いが込められています。故郷が甦るよう一心に想えば、故郷を一新できると、やなせななさんは心を込めて歌っています。
それでは又、9月11日よりお耳にかかりましょう。
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