テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1122話】「夢いちごの郷」 2019(平成31)年2月21日~28日
住職が語る法話を聴くことができます
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1122話です。
お檀家のある商店が、店じまいをしました。ここ数年のうちに次々店がなくなり、あたりは寂しい通りになりました。そのアスファルト舗装の通りを、昼日中猪の親子が闊歩する光景を見て、元商店主は愕然としたという話を聞きました。猪年だからと言って、しゃれにもならない話です。
東日本大震災前から、少子高齢化の兆しは見えていた我が山元町です。震災以後それが加速しました。商売を続けるには受難の時代となったのです。一方猪にすれば、震災復興に伴う埋め立て工事で、里山の土が大量に運び出されたので、里を追われたと言うかもしれません。大震災は、人や動物あたりの環境にも、多大な影響を及ぼしました。
そんな中で、うれしい郷(さと)ができました。「やまもと夢いちごの郷」です。農水産物の直売所です。震災前は沿岸部にありましたが、被災して約7年間プレハブ店舗で営業を続けてきました。新店舗は内陸に移設したJR坂元駅前にでき、今月9日にグランドオープンしたのです。町特産のイチゴやリンゴのほか、ホッキ貝などの海産物、地元産の果物を使ったケーキや、総菜、加工品、手工芸品など、幅広い物産を取り扱っています。
オープン日は連休初日で、加えて国道6号線沿いという立地条件もあり、数キロにわたって車が渋滞するという、これまで見たこともないような混雑となりました。人口1万2千人の町に、連日数千人のお客さんが訪れています。町の産業の発展と交流人口の拡大という狙いは、当たっています。これから、この狙いをどう持続発展させていくかが、真の復興の鍵となるでしょう。猪と交流している暇はないのです。
日々縁日のような賑わいを見せている「夢いちごの郷」を見て思いました。震災という縁がなければ、このような郷はできなかったかもしれません。勿論、震災で愛する人や財産を失い、震災さえなければと、恨みつらみを吐きたくなる時もあるでしょう。しかし、生きていくとは、吐き出してそこに留まってしまうのではなく、次のステップを踏むということです。
寺や神社の縁日は、神仏がこの世に縁を持つ日で、決まった日に特定の神仏と縁を結ぶと、より功徳があるとされています。たとえばお地蔵さまなら毎月24日です。「夢いちごの郷」では、これからは毎日が縁日であって欲しいものです。そこに祀られているのは、地震の神ではなく、地震を縁としてできた郷ですので、いつまでも大震災を忘れないというみんなの想いそのものが御神体です。そこで交わす笑顔が、新しい郷の肥やしとなるでしょう。
少子高齢化の町ですが、欲を言えば、特産のイチゴ・リンゴに加えて、嫁ごや幼子がいて、時には英語も飛び交って賑う町になりますよう、みなさま「夢いちごの郷」にお出かけください。
それでは又、3月1日よりお耳にかかりましょう。
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