テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第845話】「生きて花なれ」 2011(平成23)年6月11日-20日
住職が語る法話を聴くことができます
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第845話です。
東日本大震災から3ヵ月が過ぎました。この間数え切れない犠牲者の方の葬儀をお勤め致しました。震災間もないころの葬儀では、喪服ではなく普段着で参列されている方もかなりいました。無理もありません。着の身着のままで、やっと命だけは助かったのですから。最近ではきちんと喪服を着ている方ばかりです。しかし、喪服を着ようが着まいが、これまでの葬儀とは少し違うところがあります。それは喪主の挨拶です。喪主の方が、男性であれ、女性であれ、年齢を問わず型通りではなく、その方しか言えない内容のご挨拶をなさいます。
父を亡くした息子さんは「津波が来たとき、亡くなった父は庭にいました。家にいた私たちに大きな声で『津波だ、二階へ上がれ』と叫ぶ声に二階に上がると、二階から父が波に流されていくのが見えました。その時、父と目があったのです。父は何を言いたかったのでしょう」と涙しました。
また夫と子どもを亡くした奥さんは「夫はいつも優しくしてくれました。家族は僕が守るからと、夜中に地震がある時など、私と子どもに覆いかぶさって危険を防いでくれました。その日も、地震後すぐに保育所に子どもを迎えに行き、私の職場や親戚の家を廻り、みんなの無事を確認して家に戻ったところを、津波に襲われたようです」と気丈に仰います。
両親を亡くした息子さんは「地震があった時、すぐに電話をしました。家の前のマンホールが盛り上がって車が出せないと言う声。とにかく歩いて誰かに助けを求めるようにと言っているうちに、電話が切れてしましました。その時津波が来たのかもしれません」と、助けてあげられなかった無念さを語ります。
奥さんと一緒に津波に流され、自分は何とか助かった檀那さんは「あの時、妻の手をもっとしっかりと握って離さなければ良かったのですが、どうしようもありませんでした。悔しいです」と落胆されます。
どのご挨拶を聞いても胸が詰まり、言葉を失うばかりです。そんな中で救いは、どなたもが「いつまでもうつむいてばかりはいられません。前を向いて歩いていこうと思います」と結ばれることです。
人は自分の思いを口に出し、誰かに聴いてもらうことにより、その境遇を納得できるのかもしれません。葬儀の後、喪主の方の表情が、それまでとは明らかに違って落ち着いて見えます。そして、無念の思いで亡くなった方が、生きていたら様々な花を咲かせただろうことに、思いを馳せているかのようです。その分、生きている私たちが、一時は瓦礫に覆われたこの大地に、再び花を咲かせようという気持ちになっていることが伝わってきます。「花が咲こうと咲くまいと 生きていることが花なんだ」(アントニオ猪木)
ここでご報告致します。5月のカンボジア・エコー募金は、274回×3円で822円でした。ありがとうございました。
それでは又、6月21日よりお耳にかかりましょう。
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