テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第908話】「3.11その先へ」 2013(平成25)年3月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

20130311_35.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第908話です。
 このテレホン法話は、月3回1日・11日・21日と1のつく日に話題が変わります。東日本大震災が発生した日は3月11日でしたので、その日の朝6時過ぎに、いつものように話題を更新しました。それから約8時間後の午後2時46分、あの大震災です。ほどなく電気・電話は不通になり、テレホン法話も万事休すでした。たとえ電話が通じたとしても、テレホン法話など聴いている場合ではなかったでしょう。20年以上も休まず続けてきたが、ここで途絶えても止むを得ないと覚悟しました。
 ところが、震災から7日目の3月17日午後3時30分ごろ、電気と電話が通じるようになりました。これなら次の更新日の21日に間に合いそうだ。神様は見捨てなかったようです。というのも、全くの偶然ですが、11日からのテレホン法話は「神頼み」というタイトルだったのです。正味4日間ほどしか流れませんでしたが、15回の聴取回数が記録されました。あの混乱期に、どなたが聴いて下さったのかは、わかりませんが、15回という数字は貴重でした。
 こういう時でも聴いて下さる方がいる限りは、テレホン法話を続ける意義があり、震災に関わる何かを発信しなければならないと感じました。それから一年以上に亘って、震災に因んだ法話を流し続けました。この度そのテレホン法話の中から25話を収録し、書き下ろしの随想などを加えて、震災を語り継ぐテレホン法話集として、仙台市の金港堂より出版されました。『まっすぐに ただ、まっすぐに―3.11その先へ―』という本です。
 一年前の3月11日徳本寺で行われた震災犠牲者合同一周忌法要で、永六輔さんに講演をいただきました。そのご縁で、出版された本の帯文を認めて下さいました。「去年の3月11日、新佛の一周忌法事。僕は徳本寺にいた。災害による死。原発による不安。生命と向き合う徳本寺。その一年のテレフォン法話が活字になって出版されるという。これは読みたい。永六輔」。
 永さんは 昭和20年3月10日の東京大空襲の折、白石市に疎開していて無事でした。しかし、直前に東京に戻って犠牲になった人がいます。駅で手を振って見送ったばかりの友達が多数帰らぬ人になりました。そのあとを生きる辛さを述べておられました。ある意味でそこが今日の原点になっているように感じました。
 いま私たちは、3.11をある種のスタートとして、その先を歩いて2年が経ちました。これからも歩みを止めるわけにはいきません。そのためにも、あの時何を見て、聞いて、感じてきたのかを、心の中に宿していくことが大切です。テレホン法話集であの時を思い起こすことができ、震災で亡くなられた多くの方々への鎮魂と、そのあとを生きる更に多くの皆様と、励まし合って前へ進める一助になれば幸いです。
 ここでご報告致します。2月のカンボジア・エコー募金は、81回×3円で243円でした。ありがとうございました。
 それでは又、3月21日よりお耳にかかりましょう。

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