テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第768話】「昭和の日」 2009(平成21)年4月21日-30日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第768話です。
 現在の日本の総人口は約1億2769万人です。そのうち平成生まれの人は2298万人で、総人口の18%を占めます。しかし昭和生まれは、その4倍以上の9883万人で、総人口の77.4%にあたります。まだまだ「昭和の息吹」健在なのでしょうか。
 「昭和と聞いて最初に思い浮かぶこと」という朝日新聞の世論調査に対して、1位「高度成長」2位「戦争」3位「バブル景気」という結果が出ました。更に「戦前・戦後の昭和と平成はどんな感じの時代か」という問いに対しては、戦後の昭和は「活気のある」「進歩的」「動揺した」という明るいイメージに対し、戦前の昭和は「保守的」「暗い」「動揺」と対照的です。
 ところが、平成の方はもっと暗いイメージになります。「動揺」「沈滞」「暗い」が上位を占めます。暗く沈んで行き場のない現実に動揺しているというところでしょうか。確かに、平成に入り、バブルが崩壊し不景気感が漂っているところに、世界同時不況という嵐が吹き荒れて、ますます先行きの見えない現状があります。
 「あの頃はよかった」とは、よく年配の方が口にする言葉です。今のように便利ではなかったが、人と人とのぬくもりのある関係を築いていました。今は人が機械に便利さを求める関係を築いています。機械はぬくもりも思いやりもあったものではありません。まさに、ただ機械的にこなすだけです。人と機械の共存も大切でしょうが、人が人を忘れて人間らしい生き方をできるわけがありません。そのことで明るさを失うこともあるでしょう。
 自動販売機に挨拶されてうれしいと思うなら、道行く人同士が笑顔で挨拶を交わす方が、もっと明るい世の中になるはずです。元々「挨拶」とは禅寺の習慣で、弟子師匠の間で悟りの度合いを聞き質(ただ)す問答のことです。顔と顔が見える関係でもあります。機械に悟りの度合いを尋ねられるようでは情けない話です。
 だから「今の若い人は挨拶も碌にできない」などと言わないで下さい。平成生まれの大半は二十歳以下の子どもで、挨拶が希薄になっている時代に育っているのです。平成という現代も、昭和の人が8割近くいて、挨拶が希薄になっていることも含めて実質的な社会を築いてきました。昭和のあの頃がよかったと思うことを、もっと積極的に平成の世にも示していただければ、多少は明るい時代になっていくのではないでしょうか。4月29日は「昭和の日」です。
それでは又、5月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1310話】
「鬼より強い母の愛」
2024(令和6)年5月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1310話です。 昔インドに訶梨帝母(かりていも)という母がいて、千人もの子ども産みました。しかし、子を育てる栄養をつけるため、よその子を捕まえて食べるという鬼のような行いで、人々から恐れ憎まれていました。ある時、お釈迦さまは一計を案じ、彼女が一番可愛がっていた末の子を隠します。すると彼女は気も狂わんばかりに嘆き悲しむのです。お釈... [続きを読む]

【1309話】
「なぜ大人が生まれてこない」
2024(令和6)年5月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1309話です。 「生まれてくるのはなぜ赤ちゃん」という郁人君(8)の新聞投書を紹介します。おばさんに子どもが生まれて、抱っこさせてもらい、そこで感じたことを書いています。「ちっちゃいけれど、大人と同じものがいっぱいありました。赤ちゃんは今のぼくとちがい、やりたいことを泣いて知らせることしかでき... [続きを読む]

【1308話】
「花咲か爺さん」
2024(令和6)年4月21日~30日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1308話です。 枯れ木に花を咲かせたのは「花咲か爺さん」、被災地の荒地に花を咲かせたのは「NPO法人三島緑の会」です。静岡県三島市の団体で、東日本大震災後の2013年から日本沙漠緑化実践協会の植樹活動に参加し、毎年山元町に桜を植樹して下さっています。一昨年はコロナ禍のためお出でいただけませんで... [続きを読む]