テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【1318話】「観音さまからの宿題」 2024(令和6)年8月1日~10日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1318話です。

 「観音さま」は、正式には「観世音菩薩」と言います。菩薩とは人々を救うためにこの世に現れる仏さまです。そして「観世音」の観は「観察」の意味でよく観るということです。「世音」の音は出来事のことですから、世の中の出来事をよく見て、それなりの対処をしてくださる仏さまが観世音菩薩です。

 観察と言えば、小学生の夏休みの宿題に、朝顔や雲の観察などがあり、子どもたちの得意分野です。その底力をいかんなく発揮した出来事がありました。6月10日宮城県大河原町(おおがわらまち)の町議会でのこと。社会科の授業で議会見学のため傍聴席にいた小学6年生が、本会議中に携帯電話で「ディズニー ツムツム」のゲームをしている議員を目撃しました。

 議会に届いた感想文には、5人の児童が「ツムツムをしている人がいた」「何で話し合いの途中でツムツムをしている議員がいたのかわからない」などと書いてありました。名指しされたS議員は73歳、当選5回で議長も務めたことがあるベテランです。その釈明に曰く「ゲームをしていた事実は記憶にないが、複数の小学生が見たと言っているのでは、その事実があったと認める。プレーをしていたというより画面を見ていた」。何と見苦しく往生際の悪い弁明でしょう。素直に非を認めないのは、ゲームをしたこと以上に、恥の上塗りではないですか。

 子どもは体格の違いで大人より視線が低い分、意外なものを見つけたりします。大人が見ていない所をしっかり捉えることがあります。何より思い込みや予断がありません。純粋に素直に物事を観察します。だから、会議中のゲームに違和感を覚え、率直に感想を述べたのでしょう。

 大人なら同じ光景を見ても、どうせ議員さんなんて選挙の時だけいい顔をして、議会中も適当に時間をつぶしているんでしょうと、遣り過ごすかもしれませ。第一、傍聴席からでも見えた光景を、近隣の議員は気づかないのでしょうか。見て見ぬふりは大人の専売特許です。

 ともかくS議員は、辞職勧告が出て7月24日に辞職しました。それに対して、「ゲームは反省すべきだが、子どもから他に指摘された居眠りや態度が悪い議員がおとがめなしでは示しがつかない」という意見も出たそうです。もはや学級崩壊ならぬ議会崩壊でしょうか。

 町民の暮らしを守り、町民の幸せのため町づくりに力を尽くすのが議員の使命でしょう。観音さまには「救世(ぐぜ)観音」という別名もあります。世を救う観音ということです。議員の方々は、子どもたちに負けずに、世の中をしっかりと見るべきです。その上で、観音さまからの夏休みの宿題と思って、我こそは救世観音という気概を示す作文を、子どもたちに提出することをお勧め致します。

 それでは又、8月11日よりお耳にかかりましょう。 

        

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