テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1259話】「大條家の茶室」 2022(令和4)年12月11日~20日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1259話です。

 歴史上、伊達政宗は2人います。伊達家9代目と17代目の政宗です。17代目があの独眼竜政宗です。9代目の弟にあたる孫三郎宗行は、福島県伊達市梁川町の大枝邑の領主となったため大條姓を名乗りました。そして大條家菩提寺として徳本寺を開きました。581年前の室町時代初めの頃です。

 時は移り、17代政宗が仙台藩を開いたのに伴い、400年ほど前、大條家は宮城県山元町に領地替えとなり、徳本寺も現在地に移りました。以来大條家は仙台藩の奉行職として仕えました。ところが文政10年(1827)仙台藩主斉義(なりよし)が急死し、徳川将軍の子が仙台藩に送り込まれそうになりました。その時大條家15代道直(みちなお)が、伊達家の血を絶やしてはならぬと、幕府に掛け合い、伊達一門から斉邦(なりくに)を藩主に迎えました。その功績により、伊達家より茶室を賜ったのです。

 その茶室とは、一説には政宗が豊臣秀吉より拝領して仙台城に移築したといわれたものでした。当初仙台の大條家敷にありましたが、昭和7年大條家のお城がある山元町坂元の三の丸に移築されました。現在は町指定文化財になっています。しかし、老朽化が進み、東日本大震災での被害もあり、立ち入り禁止状態です。茶室は仙台城唯一の遺構であり、県下最古の茶室という貴重な建物です。何とか復興しなければと、私も発起人の一人となり、「山元いいっ茶組」を立ち上げ、その茶室に光を当てるべく、様々な活動をしてきました。

 この度、やっと町で復興事業に着手し、令和6年度に一般公開を目指す方針が定まりました。それを踏まえて、茶室の歴史やその存在を多くの方に知っていただく催しを、先日徳本寺で開催しました。電子紙芝居や寸劇、更には茶室にまつわるクイズ大会で、理解を深めていただきました。

 仙台時代の茶室には、そうそうたる文人達が集い、多くの書画作品が残されました。特に大條家最後の殿様といわれる17代道徳(みちのり)は、書画を描き文人としても才を発揮し、文化活動の場として茶室を活用していました。更に道徳は戊辰戦争の折、その戦後処理に奔走し、伊達家の窮地を救い、家名存続に導きました。その働きにより、藩主伊達慶邦(よしくに)より、大條から伊達の姓に戻るように命じられました。そして伊達宗亮(むねすけ)と改名。大條家は17代目より伊達の姓を名乗ることになりました。その宗亮の4代後の子孫に伊達みきおなる人物がいます。あのサンドウィッチマンです。

 歴代の大條家殿様の活躍により、貴重な茶室が残され、伊達という尊い名前も絶えませんでした。更には日本中の人気者サンドウィッチマンまで輩出しています。茶室復興の暁には、大條家の気風を受け継ぐ文化サロンとして活用できるよう願っています。それまでは、大條家菩提寺徳本寺の「3分間心のティータイム」で、心を潤してください。そして「お茶でも飲みましょう」という禅の言葉「喫茶去」を味わっていただけたら幸いです。

 ここでお知らせいたします。11月のカンボジアエコー募金は、1,712回×3円で5,163円でした。ありがとうございました。
 それでは又、12月21日よりお耳にかかりましょう。

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