テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1258話】「スジャータの供養」 2022(令和4)年12月1日~10日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1258話です。

 特許庁による知的財産を保護する商標登録に「音商標」というものがあります。その中にコーヒー用ミルク「スジャータ」のCMソングが登録されています。当時の名古屋製酪株式会社(現スジャータめいらく株式会社)の日比孝吉社長が、お釈迦さまのお悟りの因縁の話を聞いて、スジャータという製品名にしたそうです。昭和51年製品発売から全国のラジオ局で時報CMとして35年もの間流れていました。今やスジャータと言えばコーヒー用ミルクという風に定着して、商標のお墨付きに至りました。

 お釈迦さまは29歳の時「生老病死」という人生の根本的な悩みを解決するため、釈迦族の王子という地位も捨て出家します。森の中で他の修行僧とともに、厳しい修行に打ち込みます。断食やイバラの床に伏したり、炎で身をあぶる、また呼吸を停止するなど尋常ならざる行です。その結果、手足は痩せ細り、瞳は落ち窪んでしまいました。6年間の苦行は何ら悩みの解決には至りませんでした。

 そこで山を下ります。やっとのことで尼連禅河のほとりに辿り着き、沐浴して身を清めますが、疲れ切った身体は倒れてしまいます。そこを通りかかったスジャータという娘が、乳粥という米を牛乳で煮たものを供養します。おかげでお釈迦さまはすっかり体力を回復し、大きな菩提樹の下で、決意も新たに一週間坐禅を組み続けました。

 しかし、闇が訪れると人間の心の中にある煩悩が、悪魔の姿となって、襲ってきます。「一度きりの人生、悟りなど考えずに、富や権力にすがり、毎日楽しく暮らそう」という誘惑や、雷や地割れ・暴風などで恐怖心を煽り、お釈迦さまの決意を揺るがせようとします。お釈迦さまは悪魔の正体がわが心の迷いであることを見破り、悪魔を退散させました。そして12月8日明けの明星をご覧になり、縁起の法を悟られました。すべての現象は、様々な原因や条件によって成り立っているということです。この日を道を成就したという意味から「成道会」といいます。

 「生老病死」は避けがたい現実です。私たちは生まれるとき、何か迷いはありましたか。洋の東西を問わず貧富の差も関係なく、誰しも1年に365日分、年を取り、100パーセント死にます。迷っても生まれる前には戻れず、若返えることはできません。迷わず今なすべきことに心を尽くすことが、良き縁との巡り会いにつながります。

 そもそもスジャータの乳粥がなければ、お釈迦さまは悟りへの道を進むことができなかったかもしれません。お釈迦さまの生涯の中でも特筆すべき供養の食物といわれる所以です。たまたま日比社長がその話を聞き、迷わずスジャータを商品名にした先見の明は、さすがです。さて、私たちの人生もお釈迦さまから商標登録のお墨付きをいただけるよう、迷わず生きたいものです。3分間のティータイムにスジャータを入れながら思い巡らしてみてください。

 それでは又、12月11日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1376話】
「駅伝と復興」
2026(令和8)年3月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1376話です。 今年1月18日に広島市で第31回全国都道府県対抗男子駅伝がありました。宮城県代表チームは2時間16分55秒の大会タイ記録で悲願の初優勝を果たしました。この駅伝の特徴は中学生から社会人までの世代を超えたチーム編成にあります。7区間48㎞を1区4区5区は高校生、2区6区は中学生、3区7区は大学生か社会人が走ります... [続きを読む]

【第1375話】
「被災地のトランペット」
2026(令和8)年3月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1375話です。 東日本大震災で失われたものは数え切れません。しかし大震災後に新たにできたものもあります。たとえば「避難丘」という津波襲来時の一時避難場所となる築山です。町内の沿岸部に3カ所設けられています。そのひとつが「笠野避難丘公園」で、徳本寺の末寺徳泉寺の近くにあります。 徳泉寺は海... [続きを読む]

【第1374話】
「拈華微笑」
2026(令和8)年2月21日~28日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1374話です。 お釈迦さまといえば、両手を組んで坐禅をしている姿が一般的です。徳本寺の本尊はお釈迦さまですが、「拈華微笑の釈迦」といわれます。右手に優曇華の花を持っています。それには次のような話があります。 お釈迦さまが霊鷲山(りょうじゅせん)で大勢の人を前に説法をなさろうとした時、右手に持... [続きを読む]