テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第1255話】「亡き人の耳と目と」 2022(令和4)年11月1日~10日
住職が語る法話を聴くことができます

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1255話です。
「死人に口なし」とは言いますが、死んでも聴覚だけは最後まで残るそうです。昔、老僧から言われました。「目を落としたら、できるだけ速やかに、出来れば、まだ身体にぬくもりが残っている間に枕経を挙げなさい。死んでも耳は聞こえているのだから」
生死をさまよった人が、自分の名前を呼ぶ声が聞こえて、戻ってきたという話も聞いたことがあります。カナダの大学の研究では、末期患者の心臓と血流が停止した後も、10分間ほど脳波を観測したといいます。ただその結果だけで、耳が聞こえていたと断言はできないでしょう。確かめようがありません。まさに「死人に口なし」です。
先日99歳の女性の葬儀がありました。喪主を勤めたのはその家の長男であるお孫さんでした。次のように会葬御礼を述べました。「今日、火葬に行く前に最後のお別れをしたとき、おばさんの左の目元がうっすらと濡れていました。まるで生きていて涙を流しているようでした。でも悲しいからではないと思っています。亡くなる2日前に誕生日を迎えたばかりでした。その時も『ありがとう』と感謝の言葉を言ってくれました。勿論感謝するのはこちらこそです。共働きの両親に代わって、やさしくも厳しく育てていただきました。いたずらをすると、棒をもって追いかけられたこともありました。今の自分があるのはおばあさんのおかげだと思っています」
喪主は学校の先生です。少なからずおばさんとの幼い時の経験が、現在の教師としての姿に反映されているのでしょう。おばあさんの涙とも見える輝きは、悲しさ辛さより、これまでのことに関しての感謝の象徴と言えるのかもしれません。死に逝く者も見送る者も、手を合わせあえる見事な関係です。それもこれも99歳という自他ともに認める天寿を全うしたからのことです。「老いが死の恐怖を弱めるのは確かでしょう。それだけで長寿の値打ちがある」哲学者鶴見俊輔の言葉です。
とは言え、身近な人の死を受け入れるのは簡単ではありません。死んでも耳だけは聞こえるのだから、枕元で話しかけなさいというのも、亡くなったからといって、すべてがすぐにゼロになるのは忍びないからです。医学的・科学的に証明できようができまいが、最後まで聴覚だけが残るとか、涙を流したように顔が濡れていたということは、お別れの過程として、とても有り難い段階を踏んでいるような気がします。
私の両親はすでに他界しています。どちらの死に目にも遭えませんでした。仕事とはいえ遠くにいたためです。後悔がないとは言いませんが、臨終の枕辺で名前を呼んであげられなかった分、今は毎朝欠かさずお墓にお参りし、戒名をお唱えし手を合わせています。
それでは又、11月11日よりお耳にかかりましょう。
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