テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1253話】「廓然無聖」 2022(令和4)年10月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます



 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1253話です。

 全国のテレホン法話をお聴きのみなさん、10月1日のお天気を覚えていますか。無理に思い出さなくても結構ですよ。日本全国どこでも晴れていたはずです。新聞の天気予想図によれば、北海道から沖縄まですべて、10月1日の日中は晴れマーク、夜も星マークのオンパレードでした。一点の曇りもないとはこのことでしょう。

 そのようにからりと晴れ渡った、何のとらわれもない無心の境地を、達磨大師は「廓然無聖(かくねんむしょう)」と言いました。「廓」とはとりでのことで、中ががらんとして広いこと、つまり澄み渡った大空のような心です。「無聖」は、聖なるものがないと書き、聖なるものとか、凡なるものという計らいを捨てた無心の姿が、仏教の神髄であると説くのです。

 大師はインドで般若多羅の弟子となり、40年以上修行を積み28代目の祖師菩提達磨となります。般若多羅の「私が死んだら67年間インド中を歩いて仏教を広めなさい。その後中国に渡り、真の仏法である禅を伝えなさい」という命に従います。つまり100歳を超えてから、船で3年かけて中国に上陸するのです。今から1500年以上も前のことです。

 時の中国の梁の武帝は、インドからの高僧を歓迎します。武帝はいたく仏教に帰依して、「仏心天子」と崇められていました。そして大師に質問します。「私は多くの寺を建て、たくさんの僧侶を育ててきたが、どんな功徳がありますか」大師は「無功徳」と、突っぱねます。「それなら禅の神髄とは何ですか」「廓然無聖」「では、私の目の前のあなたは何者ですか」「不識(ふしき)

 自分の手柄を誇示し、認めてもらいたいという武帝の魂胆を、大師は見抜きました。何者かと問われて、不識、知らないと答えています。これは単に知らないというのではなく、武帝に染みついている執著心を捨てなさいという助言でもあったのでしょう。

 大師はこの国ではまだ真の仏法を説く時期ではないと悟り、少林寺に渡り、坐禅三昧の日々を送りました。いわゆる「面壁九年」を経て、機が熟して禅の心は伝わりました。中国に真の仏法を広めた初代の祖ということで、震旦初祖円覚大師菩提達磨大和尚と称されています。西暦532年10月5日に150歳で亡くなったといわれています。10月5日は「達磨忌」です。

 さて、日本晴れの10月1日にアントニオ猪木さんが亡くなりました。引退試合で披露した詩は有名です。「踏み出せばその一足が道となる 迷わず行けよ 行けばわかるさ」(清沢哲夫)。プロレス界に留まらず、政治家として湾岸危機のイラクに渡ったり、北朝鮮に何度も足を運んだ足跡は、迷わない猪木さんのわが道だったのでしょう。大師が迷わず100歳を超えて、未知の世界へ踏み出した想いを彷彿とさせます。廓然無聖を示すかのように青空の下、旅立った姿を偲びつつ達磨忌の法要を勤めました。
 
 ここでお知らせいたします。9月のカンボジアエコー募金は、1,315回×3円で3,945円でした。ありがとうございました。それでは又、10月21日よりお耳にかかりましょう。

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