テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1244話】「呼吸する幽霊」 2022(令和4)年7月11日~20日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1244話です。

 その昔、土葬だったころ、お墓で火の玉が見えるという話がありました。ある夜、自転車でお墓の側を通ったら、光るものが見えました。一瞬緊張しましたが、それは私が乗っていた自転車のライトが墓石に反射しているだけでした。しかし、火の玉には科学的根拠があります。遺体のリンが気化して、プカプカ浮かび、放電などで自然発火するというものです。

 そして、夏のお墓お寺とくれば、幽霊です。こんな幽霊の絵解きを聞いたことがあります。幽霊には三大特徴があります。おどろ髪が長く後ろに伸びている、両手を前に垂らしている、足がない、です。後ろに伸びている髪は、過去に捉われていることをあらわします。あの時こうすればよかったというように。前に垂らした両手は、どうなるかわからない未来のことを思う取り越し苦労の姿です。足がないとは、ずばり地に足がついていない状態です。生きているのは今なのに、その肝心なことを忘れて、過ぎたことや、まだ見ぬ事柄に惑わされているわけです。

 お釈迦さまは次のようにお示しです。「過去、そはすでに捨てられたり 未来、そはいまだ到らざるなり ただ今日まさに作すべきことを熱心になせ たれか明日死のあることを知らんや」。後悔も含めてまさに後ろ髪ひかれることは山ほどあります。病気や災害に対する不安もきりがありません。その上で深呼吸をしてみてください。できた人は大丈夫です。今この時この地に立って生きている証です。呼吸ができなくなったらおしまいです。

 呼吸の貯金はできません。昔の貯めていた息があるから、今は呼吸しなくても大丈夫などと言うことはありません。未来の為に今いっぱい息を貯めておこうということも不可能です。生涯で一番新しい呼吸をし続けることが、生きていくということです。目の前のまっさらな呼吸を愛おしむように、今日まさに作すべきことに熱心に向かうことが、人の人たる所以です。地に足がついていない人は、生きていてもそれは幽霊と同じです。幽霊とは死んだ人でもなんでもなく、今の自分に成りきれていない人の姿とも言えます。きちんと呼吸していれば、幽霊も息を吹き返すかもしれません。

 それでも怖いものが見たいという人は、是非徳本寺の怪談噺の会にお出で下さい。落語家の柳家かゑるさんが、特に夏休みの子どもさんに楽しんでもらいたいと、全国の寺をオートバイで回って行うものです。火の玉のスポットライトが当たるかもしれない本堂で、臨場感たっぷりの怪談を披露します。料金は投げ銭というユニークなものです。勿論保護者や一般の方も参加できます。7月30日(土)午後5時開演です。徳本寺本堂でみなさまのご先祖さまと共に、お待ち申し上げます。

 ここでお知らせいたします。6月のカンボジアエコー募金は、518回×3円で1,554円でした。ありがとうございました。

 それでは又、7月21日よりお耳にかかりましょう。

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