テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1232話】「生きねばと」 2022(令和4)年3月11日~20日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1232話です。

 今年は東日本大震災慰霊行事を、沿岸部の町や市においても、開催を見送るところが多くあります。昨年震災から10年という節目を終えたというのも、その大きな理由でしょう。確かに10年という数字は区切りのいいものではあります。ただ11年目も特別な年です。10年という積み重ねがあって始まる新たな1年目なのですから。そのおかげを忘れたくありません。

 実は昨年3月からの1年間で、徳本寺・徳泉寺の檀家さん合わせて71人の方が亡くなりました。そのうち90歳を超えた人の割合は、63㌫を超えています。つまり、この1年で亡くなった半数以上の方は、10年前は80歳を超えていたのです。そのお歳で、大震災という未曽有の被害を目の当たりにして、どう感じたのでしょうか。営々と築き上げてきた家屋敷や田畑などすべてが流されてしまいました。生まれ育った故郷が災害危険区域になって、二度と住まいすることができないなどと、誰が想像できたでしょうか。長年連れ添った伴侶との別れや、頼りにしていた子や孫との理不尽な別れもあったことでしょう。

 人生80年も過ごせば、来し方を振り返り悠々自適の暮らしを思い描いても不思議はありません。それが一瞬にしてなくなり、どれほど心が折れたことでしょう。しかし、どっこい挫けない高齢者が、この10年間たくさんいらっしゃいました。その代表ともいえる一人に、徳泉寺の檀家さんの島田啓三郎さんがいます。短歌・俳句に長けて、震災後数えきれない作品を新聞に投稿されました。一際印象的な歌があります。〈生きねばと 仮設の隣り 荒れ地借り 季節後れの 野菜種まく〉震災当時80半ばを超えた島田さんでしたが、いちご作りをはじめとする、農家ひとすじの人生を見事に詠いきった秀作です。

 何もかもなくなっても、助かった命を生きていこうという気概に満ち溢れています。そしてただ生きながらえるというのではなく、荒れ地を整え、野菜の命をも育んでいこうとする、あくまでも前向きな姿には、頭が下がります。島田さんのような方はたくさんいらっしゃったはずです。若い人の何倍ものエネルギーを費やし、やっとここまで来たのです。だからこそ、新しい1年目を元気に迎えて、これからの被災地を見届けて欲しかったのです。

 震災で亡くなった霊を慰めるのは勿論のこと、震災後に亡くなった方にも、被災地の現状を報告する意味においても、大震災を伝える催しは継続していくべきです。「老婆汝が為に血滴々たらん」という禅語があります。仏の老婆心が血を流すようにして手を差し伸べ、菩提心を起こせと促していることを言います。まさに震災後の老人たちが老骨に鞭打って、我々に日常を取り戻してくれたことに思いを馳せなければなりません。

 ここでお知らせいたします。2月のカンボジアエコー募金は、413回×3円で1,239円でした。ありがとうございました。

 それでは又、3月21日よりお耳にかかりましょう。

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