テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1230話】「要保護者」 2022(令和4)年2月21日~28日

住職が語る法話を聴くことができます



 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1230話です。

 運動が楽しいと思い、続ける動機を得た人は幸いです。引退した体操の内村航平は「今まで一番うれしかったのは、小学1年でけあがりができたこと」と言っています。フィギアスケートの羽生結弦も、9歳の時1回転半飛べたワクワク感で、ずっとスケートを好きになっていたと明かしました。楽しみの先に結果がついてくれば最高です。そのためなら苦しい練習にも耐えられます。

 さて北京オリンピックフィギアスケート女子のロシアのワリエワは、薬物陽性反応が出て、ドーピング違反が指摘されました。ロシアは組織的な薬物使用で制裁を受けたため、国家代表の選手ではありません。「ロシア・オリンピック委員会(ROC)」の名で、潔白な選手のみの出場でした。しかし、違反が露見しました。悩ましいことに、ワリエワの実力は誰もが認め、金メダル候補の筆頭です。そこに15歳という年齢が絡みます。スポーツ仲裁裁判所は、「要保護者」にあたるとして出場を認めたものの、演技の結果は暫定扱いなのです。

 「要保護者」だから、本人が禁止薬物の使用をどれほど把握していたか疑問だというのです。更には彼女の祖父が同じ薬を飲んでいて、同じコップを使用したなどという苦しい言い訳もあります。ともかく彼女を金メダリストにするため、周囲の大人の画策が垣間見えます。何せ「保護者」の力は絶大なのです。

 勿論、オリンピックを愛する世界の人には、不公平と映ったはずです。そんな針の筵が敷いてあるようなリンクで、ワリエワは無心で滑られるわけがありません。結果は、本来の演技にはほど遠く、回転が足りなかったり、手をついたり、転倒するなど、見る影もありませんでした。メダルには届かず、演技後にコーチに叱責され、必要な時「保護者」はどこに行ったのでしょう。

 そもそも禁止薬物使用は、誰であれ、どんな理由であれ、ダメなものはダメという毅然とした裁定をすべきです。他の選手に及ぼす影響は計り知れません。みんなが暫定の結果として受け止めなければなりません。オリンピックという晴れ舞台で、こんな中途半端で終わって誰も納得しないでしょう。何よりわずか15歳のワリエワのこれからの人生はどうなるのでしょう。

 道元禅師は「発心正からざれば万行空しく施す」と『学道用心集』で述べています。金メダルを取るという発心は良しとして、そのために不正を行えば、あらゆる人のオリンピックに懸けた努力も、すべて空しく消えてしまうのです。運動で「楽しい」という発心こそが一流への道です。その上で「要保護者」とは、例えば子どもが悪に走るようなことがあれば、それを止める人を言うのでしょう。ひとりの子どもの運動の楽しみを奪い、心に傷を負わせた大人たちこそが、禁止薬物的存在です。

 それでは又、3月1日よりお耳にかかりましょう。

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