テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1205話】「フェイスブックの朝」 2021(令和3)年6月11日~20日

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 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1205話です。

 福島市長楽寺住職の中野重孝さんは、毎朝決まって5時に、フェイスブックから挨拶を発信していました。現在の気候状況から始まり、季節の花の写真なども添えて、さわやかな一日の始まりにふさわしいものでした。そして「今日も1日よろしくお願いいたします。世界の平和と皆さまの幸せを願います」と結ばれます。毎朝それを楽しみにしてた方が全国にたくさんいらっしゃったようです。

 しかし、4月7日の朝の挨拶と、その日の午後、新幹線に乗るために福島駅にいるという発信を最後に、フェイスブックが更新されなくなりました。心配の問い合わせがあり、副住職さんが替わってフェイスブック上に、住職が急に体調を崩し入院したので、しばらくはフェイスブックが滞るかもしれませんと書き込みました。それから約50日後、5月27日に亡くなりましたとの知らせがありました。70歳というお歳でした。

 フェイスブック上で友達になっている人には、友達の誕生日を知らせるメッセージが自動的に送られてきます。6月6日に「今日は中野重孝さんの誕生日です。友達の誕生日をお祝いしよう」とありました。何人かの人は、お祝いの言葉を贈っていました。機械的な情報発信とはいえ、亡くなったばかりの人の「誕生日をお祝いしよう」と言われても、戸惑い辛さが募るばかりです。亡くなった本人自身はフェイスブックの登録を取り消すことができないので、放っておけば毎年誕生日のメッセージが届くことでしょう。それよりも、中野さんは生きたメッセージをネット上に残していかれました。

 中野さんは曹洞宗の特派布教師として全国を巡って布教に努めていました。コロナ禍でそれができずに、ネット上の曹洞宗法話動画が配信されています。そして5月1日に配信されたのは、中野さんの「今、いのちあるはありがたし」という法話です。お釈迦さまの最期の説法と言われる『遺教経』の、「世は皆無常なり、會ふものは必ず離るることあり憂悩を懐くこと勿れ」という1節を引いていました。「私たちの命にはいつか別れがある。その時、憂い悩んではならないというお釈迦さまのお示しです。そんなお釈迦さまに見守られている命のありがたさに感謝しましょう」と中野さんは淡々と伝えていました。病気になる前に録画されたものでしょうが、お釈迦さまと同じように中野さんの最期の説法となってしまいました。生前から少々の悩み苦しみは、笑い飛ばしてしまう方でした。弔問の際に拝んだそのお顔は、憂悩の影もなく穏やかで安らかでした。それにしてもあまりに突然で早過ぎます。私たちはまだ憂悩を懐いたままです。これからもあなたのフェイスブックで朝の元気をいただきたかったのに残念です。

 ここでお知らせいたします。5月のカンボジアエコー募金は、209回×3円で627円でした。ありがとうございました。

 それでは又、6月21日よりお耳にかかりましょう。

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