テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1186話】「出山釈迦図」 2020(令和2)年12月1日~10日


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1186話です。

 12月8日はお釈迦さまがお悟りを開かれた日です。仏道が成就したということで成道会と言います。お釈迦さまは菩提樹の下で坐禅三昧になられてから8日目の朝、明けの明星をご覧になり、忽然として悟られました。

 カピラ城の王子として生まれたお釈迦さまですが、幼少の頃から世の無常を儚んでおられました。29歳の時お城を飛び出し、修行の道を選びます。苦行林という山に籠り、他の修行者と一緒に難行苦行に勤しむこと6年間。しかし、不眠不休や断食など、いたずらに肉体を苛(さいな)むだけでは、悩みの根本的な解決には至らないことに気付き、山を下りる決意をします。その後坐禅三昧に入られたのです。

 その山を下りるお釈迦さまのお姿を描いた「出山(しゅっさん・しゅっせん)釈迦図」というのがあります。痩せ衰えて骨と皮だけのお釈迦さまは、伸び放題の髭で、裸足で長い衣を引き摺るようにしています。この時点ではまだ悟りを開いていませんので、仏という存在ではありません。しかし、仏の特徴である白毫(びゃくごう)という眉間に光を放つ白い巻き毛や頭頂が少し盛り上がった肉髻(にっけい)などが描かれて、もはや通常の人間ではないことを暗示しています。

 さて徳川家やそこにまつわる大名のお宝を所蔵する徳川美術館が名古屋にあります。そこで「出山釈迦図」を拝観する機会がありました。犬山城主9代目の成瀬正肥(まさみつ)所有の雪舟が描いたと伝えられているものです。普通お釈迦さまの髪型は、縮れて渦巻いた螺髪(らほつ)というものです。肉髻も螺髪のまま盛り上がっています。ところが出山の釈迦の肉髻には螺髪がなく、失礼ながら禿げているかのように見えます。雪舟の釈迦図もその通りでした。出山釈迦図の特徴ともいえます。厳しい苦行のせいではないのでしょうが、不思議です。ただ肉髻そのものは、超人的で頭脳明晰な証とされています。

 戦国の武将も尊んだ出山の釈迦の魅力はどこにあったのでしょう。お釈迦さまが苦行を無益と感じたように、戦いの虚しさを一番感じていたのは武将かもしれません。戦いという山を下りて、お釈迦さまのような真の悟りを得たいと願ったのではないでしょうか。ほんとうのリーダーならば、誰もが心安らかに暮らせる穏やか国造りを目指すはずですから。

 お釈迦さまのお悟りの内容は「草木国土悉皆成仏」と伝えられています。草木も国土も悉く皆ありのままの仏そのものだということです。突き詰めれば、この世の生きとし生けるものは仏しかいないということです。仏と仏が喧嘩するなどということはあり得ません。余談ですが、もしどうしても夫婦喧嘩をしなければならなくなったら、お互いは仏なのですから、先ず合掌してから始めましょう。

 それでは又、12月11日よりお耳にかかりましょう。

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