テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1159話】「月見草」 2020(令和2)年3月1日~10日



野村克也さんの色紙

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1159話です。

 「月見草ここで折れてはおしまひよ」(飯島晴子)。月見草は夏の夕方に白く咲き始め、翌朝にしぼみます。咲いている時、誰にも見られずに、夜が明けて人目につくようになったのに花はないという。ここで折れてしまっては、その存在すら気づかれずに終わってしまいます。その点、ひまわりは燦燦とした太陽の下、堂々と咲き誇って存在感十分です。

 野村克也さんが2月11日に84歳で亡くなりました。南海(現ソフトバンク)にテスト入団するも、戦後初の三冠王に輝くなど、強打者の捕手として活躍。選手兼監督として、パリーグ優勝もしています。その後、ロッテ、西武で「生涯一捕手」として、45歳まで現役を続けました。しかし、同時代には巨人の長嶋選手や王選手がいて、その活躍の陰であまり目立ちませんでした。そして「長嶋や王がヒマワリなら、おれはひっそりと日本海に咲く月見草」との名言を残しました。

 現役通算3017試合、2901安打、657本塁打、1988打点というとんでもない数字を残しましたが、それでもすべて歴代2位の記録です。そういう巡り合わせは、野村さんの野球人生を象徴しています。しかし、「ここで折れてはおしまひよ」にならなかったのは、野村さんならではです。

 監督になってその存在感は増すばかりでした。弱小球団に頭を使う野球を浸透させ、優勝に導きました。また戦力外の選手を復活させたりという手腕は、単に野球界での評価に留まらず、広く一般社会でも注目されました。もはやヒマワリになったかのようでした。楽天の監督に就任して、負けチームを日の当たるチームに育て、リーグ2位に押し上げるも引退させられました。翌年私たち曹洞宗亘理郡内寺院で、野村さんの講演会を催しました。案の定、もっと監督を続けていれば、優勝できたのにとぼやいていました。その年、楽天はまた最下位に戻ったのです。

 お願いした色紙には「野球に学び 野球を楽しむ」と墨書して下さいました。「野球」という字には、「しごと」とふり仮名が付いていました。野球を生業とすれば、仕事という意識をもって当然でしょう。仕事から学んで奥義を極めると、楽しいと思えるようになるのでしょうか。或いは、楽しみながら仕事ができれば、素直に学ぶことも見えてくるのかもしれません。

 野村さんは選手としも監督としても、3000試合以上出場という、大リーグにもない記録を達成しています。監督としての成績は、1565勝1563敗で、2勝の勝ち越しです。というより、1500回以上負けても、そこで折れないで、負け数を超える勝ち星を目指した野球人生でした。結果、勝ち越したのです。私たちの人生にも、山ほどの良いことも悪いこともあります。最後に均(なら)して、ひとつでも勝ち越したと言えるようでありたいものです。

 それでは又、3月11日よりお耳にかかりましょう。

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