テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1151話】「喪中はがき」 2019(令和元)年12月11日~20日

  お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1151話です。

 今年10月に70代の弟さんを亡くされたお兄さんが、お参りにきてこう言います。「家の者が喪中のはがきを出しなさいとせかせるのですが、私は気がのりません。間もなく四十九日も迎えますから、新たに気持ちを切り替えて、まさに、あけましておめでとうと言いたいくらいです。この時期よそからも喪中のはがきをいただきますが、誰のための喪中なのかわからないものもありますからね」

 確かに喪中のあいさつが少し軽く扱われている気がします。喪中の喪という字は、畳や板敷に敷く長い布の敷裳(しきも)の裳(も)につながるとか。遺族がそれをすっぽりかぶって、一室に閉じこもり慎みを続けたという説があるほどです。

 その根底にあるのは、「汚穢(けがれ)」の思想かもしれません。死人を放置しておけば、腐敗してしまいます。そこから、昔、人が亡くなるとその近親者は、死人から肉体的・精神的に「死の汚穢」をうつされると考えられていました。そのため、汚穢を浄化する一定の期間、世間から隔離して、謹慎生活を送ることが、喪に服するということになったのでしょう。因みに、明治7年(1874)の太政官布告の「服忌令」をみると、父母や夫の死の場合は、服喪期間は13カ月ですが、妻や子どもや兄弟が死んだ時は、90日間となっています。

 現代において、人の死を汚穢とみなすことはほとんどないでしょう。宗教的にも全くその通りです。しかし、会葬御礼についている「清めの塩」は、死は汚穢という考え方の名残と思われます。最初から汚穢ていないのですから、清める必要もないのですが、日本人独特のこだわりでしょうか。

 さて、喪中ですが、近親者が亡くなったとして、私たちはどれほど喪中にふさわしい生活をしているでしょうか。何カ月間も世間と関わらない生活など、現実的には不可能です。葬儀が終われば、あっという間に日常生活に戻らざるを得ない現実があります。どんなに辛く悲しくとも、仕事や学校をいつまでも休むわけにはいかないのです。

はがき一枚で喪中の意思表示をするのは、真の喪中の意味合いを考えれば、いかにもご都合主義です。たとえば昨日忘年会で一緒に騒いだ人から、翌日喪中のはがきが届いたとしても、ほんとうに喪中の生活をしているのと、疑ってしまいます。肝心なのは、日常生活を営みながら、どれだけ亡き人を忘れずにいられるかでしょう。

 件(くだん)のお兄さんは、7日毎に朝早く来て、弟さんのところに手を合わせていかれます。「弟に先立たれ悲しみは消えませんが、日々冥福を祈ってきて、何とか気持ちが落ち着いてきました。年が明けたら、心からおめでとうが言えるような気がします。新しい年もよろしくお願い申し上げます」そんなはがきをこそ、みなさんに差し上げたいはずです。

 ここでお知らせいたします。11月のカンボジアエコー募金は、130回×3円で390円でした。ありがとうございました。それでは又、12月21日よりお耳にかかりましょう。

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