テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1147話】「ソプラノの声」 2019(令和元)年11月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます

  

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1147話です。

 たとえば、誤ってグラスを落として割ったとします。驚いて大きな声を出すことでしょう。しかし、大きな声でグラスを割ることができるとしたら、もっと驚きです。ソプラノ歌手でその声をもって、グラスを割った人がいるそうです。想像を超えた神技のレベルでしょうか。

 さて、先日行われた第13回徳本寺テレホン法話ライブのゲストは、ソプラノ歌手の千石史子さんでした。まだグラスを割ったことはないそうですが、その伸びやかで澄んだ歌声に、割れんばかりの拍手喝采が寄せられました。季節に合わせた「紅葉」や「赤とんぼ」などの童謡を含めて、8曲熱唱して下さいました。

 童謡は誰でも口ずさめます。しかし、ソプラノ歌手はそんな生易しいものではありません。どんなシンプルな曲であっても、全身全霊をかけて、歌唱するという印象でした。本堂という空間の隅々まで声が行き渡り、全聴衆を包み込むような圧倒的な迫力がありました。失礼ながら華奢な体のどこから、そのような声が出るのだろうと思わずにはいられませんでした。

 本堂でのリハーサルの折、本尊さまにお参りをさせてくださいと、丁寧に手を合わせられました。そして「すみません、お線香はご遠慮させてください。煙が喉によくないものですから」と、申し訳なさそうに言うのです。それはそうだろうと納得致しました。声が命です。これからの時期は特に喉を守るために、万全の体調管理をするそうです。

 我々僧侶もお経を挙げるという点では、声が命です。しかしそのための節制はどうでしょうか。第一線香の煙はなくてはならないものです。喉にとっては過酷な環境の中でもお経を挙げていると自慢したいところですが・・・。僧侶に美声は求められていないからと甘えています。お経の文言も分かりにくく、それをいいことに、むにゃむにゃという読み方が、お経らしいと勘違いしている僧侶もいます。お経だって意味は分からなくとも、一音一音はっきりお唱えしなければなりません。その上でソプラノ歌手と同じように全身全霊を尽くすことが大切です。大いに反省しました。

 あるバイオリニストの言葉です。「1日練習しないと自分にその結果がわかり、2日しなければ批評家の耳が捉える、3日練習を休めば聴衆がこれを聞き分ける」。千石さんもそんな思いで日々の節制と鍛錬があって、すべての聴衆を魅了したのでしょう。私たちも毎朝本堂でお経を挙げてお勤めをします。毎日が修行だからです。「1日練習をしない」という気持ちさえ抱く余地はないのです。それならグラスを割るほどの大きな声でお経を挙げて、檀家さんを包み込む事が出来そうですが、まだその域にはあらず。ただ悩みごとのある檀家さんと、腹を割った対応はできるかもしれません。

 それでは又、11月11日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1201話】
「皆勤賞」
2021(令和3)年5月1日~10日

news image

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1201話です。 私の中学高校時代には、無遅刻無欠席者には皆勤賞、遅刻はしたが無欠席者には精勤賞というのがありました。私は6年間無遅刻無欠席で皆勤賞になり、記念に18金のネクタイピンをいただきました。卒業年度の1968という数字も刻印されています。 こんな手前味噌の話をしたのは、4月3日の河北新報に掲載された仙台市の木村大志さん... [続きを読む]

【第1200話】
「島田さん」
2021(令和3)年4月21日~30日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1200話です。 「新聞でお名前見てると看護士が95歳の心を癒やす」島田啓三郎。これは2月28日の河北新報の歌壇に載った歌です。島田さんは私のもう一つの住職地徳泉寺の檀家さんで、総代を勤めいただいたこともあります。しかし、去る2月25日に数え年97歳で旅立たれました。その3日後の新聞掲載だったの... [続きを読む]

【第1199話】
「サクラサク」
2021(令和3)年4月11日~20日

news image

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1199話です。 東日本大震災の大津波で何もかもが流され、もはや元の姿に戻ることはできないと諦めの気持ちでした。ある朝、鶯の声が耳に入ってきて、我に返ったのです。こんな時にも自然は変わらず営み続けている。それから季節の移ろいをメモするようになりました。季節を感じることで、悲惨な現状に流されまいと... [続きを読む]