テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1141話】「13匹の抜け殻」 2019(令和元)年9月1日~10日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1141話です。

 今年の8月15日新潟県の糸魚川市で、31.3度を記録しました。これは最高気温ではなく最低気温です。最低気温の最も高い記録を29年ぶりに塗り替えたのです。要するに一日中気温が30度を下回らなかったということです。因みにこの日の最高気温は、同じ新潟県の寺泊で、40.6度でした。まさに猛暑の夏そのものです。

 そんな暑さの中で元気だったのは、蝉たちです。徳本寺の境内で蝉の初鳴きを聞いたのは、7月13日でした。去年は7月1日でしたので、遅い方でしょう。鳴き声も、弱々しいものでした。ところが梅雨明けの7月30日あたりから、暑さに比例して蝉の大合唱が連日幕を開けました。

 朝6時に梵鐘を撞きますが、それより早く蝉は鳴いていました。早朝から気温が高かかったのでしょう。全国的に最高気温も最低気温も高い夏だった証かもしれません。そしてちょっと珍しい光景に出会いました。鐘撞き堂の柱や天井に13匹の蝉の抜け殻が確認できたのです。蝉の抜け殻が珍しいわけではありませんが、鐘撞き堂という限られたところに、13匹も集中したのはどうしてなのでしょう。中には1本の梁に4匹かたまってへばりついているものもありました。

 「抜け殻」という言葉は、人間的にはあまりいい言葉ではありません。抜け殻同然になったなどと言うように、魂が抜けたうつろな状態のたとえに使われます。しかし、昆虫や甲殻類などの脱皮した後に残った殻は、その成長過程を象徴するものであり、プラスイメージでしょう。

 普通の蝉は、樹皮や枝などに産卵され、その年の秋もしくは翌年の梅雨時に孵化して、幼虫となり地中に潜ります。木の根にとりつき樹液を吸い成長します。その期間は、数年から5年ともいわれます。その後地上に這い出して成虫になる準備です。この時は硬い殻に守らています。蟻などに襲われないように、日没後に羽化して成虫となります。蝉となって飛び立った後に抜け殻が残るわけです。

 蝉の一生は地上に出てから一週間と言われていましたが、最近の研究では3週間から1カ月ほどだそうです。いずれにしても短い生涯の使命は、種の保存にあります。子孫を残さんがために、オスはメスを求めて鳴き尽くします。天敵に襲われることもも多く、使命を果たすのは至難なことでしょう。果たして、鐘撞き堂から飛び立った13匹の蝉たちの生涯はどうだったのでしょうか。「俺たちも命を懸けてひと夏を生き切っている。人間様も抜け殻同然などになっていないで、限られた無常なる命をしっかり生きよ」と、13匹の抜け殻は言っているかのようです。その蝉の無常の想いを代弁するつもりで、今朝も鐘を撞きました。もし鐘の音を聴いて、一皮剥けて、一念発起するような人が現れたら幸いです。

 それでは又、9月11日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1308話】
「花咲か爺さん」
2024(令和6)年4月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1308話です。 枯れ木に花を咲かせたのは「花咲か爺さん」、被災地の荒地に花を咲かせたのは「NPO法人三島緑の会」です。静岡県三島市の団体で、東日本大震災後の2013年から日本沙漠緑化実践協会の植樹活動に参加し、毎年山元町に桜を植樹して下さっています。一昨年はコロナ禍のためお出でいただけませんでしたが、苗木を送って下さいました。縁... [続きを読む]

【1307話】
「揺らがず大遠忌」
2024(令和6)年4月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1307話です。 たとえばですが、「正月の元旦に地震の避難訓練をします」と言われて、参加しますか?正月早々とんでもないと、誰でも思います。しかし無常なる自然は、正月とか人間の都合に忖度しません。能登半島では元旦にとんでもない地震が起きたのです。 実は能登半島は曹洞宗にとっては聖地です。曹洞宗には本山が2つあります。福井県の永平寺... [続きを読む]

【1306話】
「シッダールタ」
2024(令和6)年4月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1306話です。 「文殊丸」「行生」という2人の名前で、どなたかわかりますか。ヒントはどちらも曹洞宗に関わる方です。文殊丸は大本山永平寺を開かれた道元禅師、行生は大本山總持寺を開かれた瑩山禅師の幼名です。昔は幼い時に仮に名付ける名前や元服以前の名前を持つことがあったようです。 さて、4月8日は... [続きを読む]