テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1140話】「ヒマワリの夏」 2019(令和元)年8月21日~31日

 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1140話です。

 「スマイリング・シンデレラ」と世界中から称賛された女子ゴルフの渋野日向子(しぶのひなこ)さん。8月4日全英オープンで優勝し、日本勢42年ぶりの海外メジャー制覇を果たしました。20歳とは思えない勝負度胸と、普段は勿論ピンチの時も笑顔を絶やさないその姿勢が、共感を呼んでいます。日向子という名前は向日葵に通ずるのでしょうが、大輪の花の力強さと明るさを感じます。

 さて、日向子さんの偉業の2日前、私もヒマワリに出会ってきました。しかもその数250万本です。山元町の東日本大震災から復旧した8.3ヘクタールの農地一面に、ヒマワリが咲き誇っていました。そこは大震災ですべてが流された徳泉寺の南西2キロほどのところです。震災前は檀家さんの家屋敷や田畑が広がっていました。現在は災害危険区域になり、住まいすることができなくなりました。新浜という行政区でしたが、一軒残らず被災し、移転を余儀なくされました。そのため新浜区は消滅してしまいました。しかし、広大な農地となり、その一部がヒマワリ畑となったのです。

 因縁を感じてのヒマワリ畑訪問でした。といいますのも、徳泉寺復興の一環として、復興誌製作のためにクラウドファンディングによる資金勧募に挑戦したところ、目標額を大幅に超える254万円のご支援をいただきました。まさにヒマワリの数とほぼ同じ数字だからです。徳泉寺を知っている人も、知らない人も、全国の様々な人が応援してくださったおかげです。ほんとうに有難い限りです。

 250万という数字だけを見ても聞いても、あまり実感がわきません。しかしヒマワリ畑に行ってみて、圧倒されました。東京ドーム約2個分の広い土地一面が、見事にヒマワリの黄色に染まっていました。このヒマワリ一本が一円として、総計250万円になるんだと、無粋な想像をしたほどです。250万円の景色は息をのむばかりでした。青空の下、ヒマワリは名前の如くどれもが太陽に向かっているのです。大地から湧き上がるエネルギーそのものに見えました。

 今年は猛暑の夏でしたが、日向子さんの活躍も含めて、ヒマワリの夏という印象です。ヒマワリは太陽の移動に合わせて、向きを変えるので「ひまわり」という説があります。今被災地にとっての太陽は復興にたとえてもいいかもしれません。ヒマワリのその逞しさは被災地から立ち上がった人の姿に見え、その明るさは被災地を励ます人の笑顔に思えました。そのヒマワリの数以上のご支援をいただいた復興誌のタイトルは、『青空があるじゃないか』です。ヒマワリが似合う本にして、復興の仕上げに向かわなければと、改めて心したことでした。

 それでは又、9月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【1324話】
「少年の心
達磨の心」
2024(令和6)年10月1日~10日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1324話です。 心理学者の児玉光雄は、大リーグの大谷選手を「少年の心を持つスーパーアスリート」と表現しています。少年時代から野球を楽しむ心を忘れず、自発的に物事に取り込める姿勢が、想像を超えた活躍に繋がっているというのです。 大谷選手は50-50つまり、50本塁打50盗塁という夢のような記録を、軽々と超えてしまいました。アメリ... [続きを読む]

【1323話】
「土俵に彼岸を見た」
2024(令和6)年9月21日~30日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1323話です。 大相撲秋場所6日目結びの一番。大関豊昇龍が平幕王鵬にすくい投げで敗れました。余程悔しかったのでしょう。土俵を拳(こぶし)で突き、きちんと礼をすることなく、花道に向かったところ、審判長に呼び止められ、再び土俵に上がります。そこでも礼が合わず再びやり直しをさせられました。洒落ではあ... [続きを読む]

【1322話】
「醍醐味は元気でゆっくり」
2024(令和6)年9月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1322話です。 牛乳の精製過程の5つの味のうち、最後に出てくる最上の味を醍醐味と言います。仏教ではそれを最高の境地の涅槃にたとえます。そして醍醐の原語は「サルピル・マンダ」で、あのカルピスの名称の元であると言われます。そのカルピスが好物で、116歳の今も元気で世界最高齢に認定されたのは、兵庫県... [続きを読む]