テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1132話】「喜捨」 2019(令和元)年6月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます


 
 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1132話です。

 「断捨離」とは、モノへの執着を離れ、不要なモノを捨てるという考え方です。とは言っても、お金を落とす人はいても、お金を捨てる人はいないでしょう。ですが喜び捨てると書く「喜捨」という行為があります。進んで金銭などを寺や神社・困っている人に差し出すことです。

 アメリカの資産家ロバート・スミスさんは、ある大学ののべ400人分に当たる卒業生全員の学生ローンを肩代わりすると表明しました。その額4千万ドル(約44億円)です。卒業生の多くは、3万~4万ドル(330万~440万円)の学生ローンを抱えているそうです。彼はアフリカ系出身です。アフリカ系の学生が中心のモアハウス大学の卒業式で、「この国で8世代暮らしてきた一家として、みなさんの乗る『バス』に少し燃料を入れよう」と粋な申し出をしたのです。

 そう言えばアメリカの先住民の一族の長は、大事な判断の時、7代先の末裔(まつえい)にとって良いと思えば「イエス」、良くなければ「明日のためには良くてもノー」と答えるように義務づけられているとか。アフリカから来たであろうロバート・スミスさんの先祖は、どんな判断の下に「イエス」と言ったのでしょうか。その先祖の想いの先に彼が存在し、50億ドル(5500億円)の総資産を擁するまでになっています。そして彼は言います「善意をつないでほしい」と。

 さて、時を同じくして、日本でも善意がつながった話があります。4月24日沖縄の高校2年生の崎元颯馬(そうま)さんは、伯父の葬儀で実家の島に帰るため、モノレールで那覇空港に向かっていました。途中で財布をなくしたことに気づきました。空港に着いても降りるに降りられず、座席で頭を抱えていました。たまたま乗り合わせた埼玉県の医師、狩野屋博さんが思わず声をかけました。飛行機の時間が迫っているのに、お金がなくて困っているという、なくしたお金は6万円。そのうち発車のベルが鳴ったため、6万円を手渡し先を急がせました。連絡先や名前も確認せずに。

 高校生は無事葬儀に参列できた後、沖縄の新聞社に連絡して、「お礼がしたい」という顔写真付きの記事を掲載してもらいました。いきさつを聞いていた医師の同僚が、ネットでこの記事に気づき、狩野屋さんに伝えました。こうして、思わぬ出会いから約1カ月後の5月21日、狩野屋さんが沖縄の高校を訪れ、崎元さんと再会。なくした財布は別の駅で保管され、6万円は戻ったので、お金を返し、直接お礼を言うことができました。

 不要なお金を持っている人はいません。それを喜捨できる人は極わずかです。44億円はけた外れで、自分と比較はできませんが、6万円ならどうでしょう。何の疑いも迷いもなく、見知らぬ人に差し出せるでしょうか。高校生とて、地獄で仏に会った思いで、どれほど有り難かったことか。何とかお礼を言いたいと願っていたのです。それも喜び感謝するという立派な「喜謝」と言えます。

 それでは又、6月11日よりお耳にかかりましょう。

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