テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1129話】「令和に因み」 2019(令和元)年5月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます


 
 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1129話です。

 月を望むと書いて「望月」、満月のことです。そして陰暦の15日を望日(ぼうじつ)といいます。因みに1日は朔日で、ひと月が終わって暦の最初に戻った日を意味します。お寺では毎月朔望(さくもう)つまり1日と15日の朝には、祝祷諷経(しゅくとうふぎん)という特別なお勤めがあります。新月と満月という月の変化の節目に、心を新たにする意味合いもあるのかもしれません。

 祝祷諷経は元々聖なる人を祝う「祝聖(しゅくしん)諷経」と称していました。その昔の中国で皇帝(天皇)の福寿長久を祝うお勤めでした。当時は皇帝が絶対的専制者であり、寺院も国家との良好な関係を保つことが必要だったからです。日本でもその名残を踏襲していた時代がありました。時の国家や権力者を仏と仰ぐような面が祝聖諷経にはありました。

 しかし現代における祝祷諷経では、その内容が改められました。曹洞宗の本尊のお釈迦さま、両大本山の永平寺の道元禅師、總持寺の瑩山禅師を一仏両祖として崇めるという本来の宗教の姿にたち帰っています。更には「正法興隆 国土安穏 万邦和楽 諸縁吉祥」を専らに祈るというお唱えを致します。つまり、「仏の正しい教えが盛んになり この国が安らかで穏やかでありますように また 世界の国が和平の世を楽しめ すべてのことがらに幸いが訪れるように」と念じているのです。

 さて、わが国は5月1日に「令和」と元号が改まりました。天皇の代替わりの時だけ改元する「一世一元」の制度に則り、新しい天皇の即位に伴うものです。元号の歴史を見れば、天皇の支配に服するという象徴的な意味合いがあるから、廃止した方がいいという意見もあります。しかし大方は、元号イコール天皇というより、元号イコール時代という感覚が強いと思われます。祝聖諷経と祝祷諷経の違いに似ています。

 この度の令和という元号は、万葉集にある令月が引用のひとつになっています。「令」という字は「形がよい」という意味もあり、令月から望月をイメージでき、円かな心の象徴でしょうか。「和」は「風和らぎ」ということですが、平和でおだやかな暮らしができる世の中であって欲しい、という願いも込められていることでしょう。

 1日が改元日ということで、国を挙げてお正月が来たかのようなお祝いムードです。ただお正月のような浮かれ方は、どうしても「三日坊主」なってしまいます。新元号で感じた新鮮さとおだやかな世を願うことを常に忘れてはいけません。三日坊主でないほんとうの和尚さんは、少なくとも毎月1日と15日には、祝祷諷経を勤めて、仏国土に暮らす人々の幸せを願っています。外見だけの改元に終わることなく、令和が良き時代だったと例えられる例話を、このテレホン法話でもたくさん紹介できるよう努めてまいります。

 それでは又、5月11日よりお耳にかかりましょう。

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