テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1126話】「花のイチロー」 2019(平成31)年4月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1126話です。

 「散る花が 開花のニュース 吹っ飛ばし」こんな川柳が3月23日の新聞に載っていました。東京では、3月21日に桜の開花宣言が出されました。その夜、大リーグ・マリナーズのイチローが引退を表明しました。驚きのニュースは世界中を駆け巡り、桜の花は満開になる前に、しぼんだかのようでした。

 しかし、イチロー引退へのはなむけとしては、これ以上にない舞台だったでしょう。マリナーズの開幕2連戦をアメリカではなく、日本の東京ドームで行うということは、イチローのために用意されたのかと思えるほどです。残念ながら、2試合に出場するも、1本のヒットも打つことはできませんでした。それでもイチローは言いました。「あれを見せられたら、後悔などあろうはずがありません」。観客に促されて、試合終了後のグラウンドに、イチローが再び立った時に、大きな拍手と歓声に包まれたからです。

 45歳のこの日まで、日米で28年間現役を続けました。その安打数は4367本。日本で7年連続首位打者、アメリカではシーズン262安打をはじめ、10年連続200安打などの大リーグ記録を打ち立てました。記録にも記憶にも残る選手として、永く語り継がれることでしょう。しかし、イチローは「記録はいずれ誰かに抜かれる。それらはホント小さなことに過ぎない」と、頓着なしです。

 もはや記録の偉大さは、誰もが認めるところですので、いちいち何かを語るのは野暮というもの。それより記録の裏に何があったのか、それこそが、イチロー自身が最もこだわってきたことなのでしょう。「自分の限界をちょっと超えていく。その積み重ねでしか自分を超えていけない」と言っています。やることをやっていれば、結果は自ずとついてくると言わんばかりですが、イチローの限界と凡人の限界には差がありすぎます。

 桜は満開になって人に喜ばれ、散り際の良さも、日本人の心情に触れるものがあります。イチローの現役時代の活躍は、まさに日本を象徴する満開の桜の如きでした。たまたま4月8日はお釈迦さまがお生まれになった花まつりです。ヒマラヤ山脈の麓のルンビニの花園で誕生しました。咲き誇る満開の花々がそれを祝福しました。そこでお釈迦さまは「唯我独尊(ゆいがどくそん)」と唱えられました。これは、われ独りが尊いとうぬぼれているわけではなく、まわりと違うたった一人の私という意味でしょう。お互いがかけがえのない存在であるということの究極の言い回しです。イチローが自分というものを極め尽くした姿に重なるものがあります。更にお釈迦さまはこの時、七歩歩かれたという伝説があります。それは六道という迷いの世界を超えるという意味での七歩目です。イチローは常に迷わず、自分の限界をちょっと超えるという七歩目の精進を重ねてきたのでしょう。事実グラウンドに入る時は、最初の一歩を常に意識して踏み出していたそうです。

 それでは又、4月11日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1218話】
「二面石」
2021(令和3)年10月21日~31日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1218話です。 先般、奈良県明日香村にある天台宗の橘寺をお参りする機会がありました。付近に聖徳太子が生まれた場所があります。橘寺も聖徳太子が建てた寺院のひとつです。当然の如く本尊には、聖徳太子像を祀ってあります。建立年代は不明ですが、「日本書紀」に寺の存在が記されているので、1500年以上の歴史があるようです。 そこに「二面石... [続きを読む]

【第1217話】
「品位(ひんい)と品位(ほんい)
2021(令和3)年10月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1217話です。 「皇室経済法6条」には、皇族が身分を離れる際には、品位保持のため一時金を支給する旨が定めれています。渦中の眞子さまが小室さんと結婚するにあたり、その一時金を辞退しました。1憶3725万円という額です。「小室家の金銭トラブル」ゆえのことなのでしょう。二人の結婚の意思は固いものの、... [続きを読む]

【第1216話】
「念仏」
2021(令和3)年10月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1216話です。 「念仏申すより田を作れ」という諺があります。極楽往生を願って念仏を唱えるより、田んぼに出て米を作れということで、直接利益になることに精を出せということでしょう。我が町には各地区ごとに念仏講がありましたが、今や風前の灯となってしまいました。米の収穫が増えたからではなく、念仏講員が... [続きを読む]