テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1121話】「奉納涅槃図」 2019(平成31)年2月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1121話です。

 2月15日はお釈迦さまが亡くなった日で、その様子を描いた涅槃図(ねはんず)を掲げ、ご遺徳を偲ぶ涅槃会(ねはんえ)が行われます。平成23年3月11日に、私が兼務住職を勤める徳泉寺では、月遅れの涅槃会と檀家総会が行われました。すべて終了して間もなく午後2時46分に、東日本大震災が発生。そこは海から300メートルのところです。掲げていた涅槃図を桐箱に納めただけで、後片付けもそこそこに全員寺から避難しました。

 ほどなく徳泉寺一帯は、大津波に襲われ、すべてが跡形もなく流されました。その涅槃図は平成20年に東京の永島多美子さんが精魂込めて描き、徳泉寺に奉納されたものでした。わずか3年間で失われ、申し訳ない思いでした。永島さんには「涅槃図は多くの犠牲者と一緒に流されていく運命にあったのです」とのお言葉をいただき、ただただ手を合わせるばかりでした。

 そして昨年秋に、再びご縁をいただき新たな涅槃図が奉納されました。埼玉県の関根俊子さんからです。彼女は大震災で多くの方が犠牲になられたことに心を痛めておられました。徳泉寺の涅槃図が流されたことも知り、亡くなられた方の供養と、残された方の悲しみに寄り添える涅槃図を、ということで渾身の絵筆を揮われました。

 それは縦2.3メートル、横1.2メートルの紺紙金泥の涅槃図です。紺色の紙に金粉をにかわで溶かした金色の細い線で描かれた細密画のような絵です。どれほどの根気と信心を尽くされたことでしょう。有り難さに自ずと手が合わされます。そこには、チュンダの姿も描かれています。チュンダは町の鍛冶屋で、お釈迦さまが説法の旅にお出でになられたときに、供養の食事を差し上げました。しかし、その食事の後、茸料理にあたられたのか、お釈迦さまは激しい腹痛に見舞われ、ご自身の入滅の時が近いことを悟られます。そしてクシナガラの沙羅双樹の林の中で最期を迎えられます。

 その時お釈迦さまは、チュンダの食事を責めるかのような弟子たちに伝えます。「チュンダが私に供養したことを後悔するようであってはならない。私が悟りを得た時の乳粥を施したスジャータと、最期に臨んでよく食事を施したチュンダは、等しくたいへんな功徳を積んだことになるのだ」。そのお言葉を裏付けるように、涅槃図にはご飯を盛った器を捧げているチュンダが描かれています。お釈迦さまの大慈悲心を示したお心遣いです。

 先に奉納された涅槃図は、津波により流されましたが、永島さんの功徳がなくなることはありません。そしてこの度の関根さんの奉納の功徳は、涅槃図に描かれたごはんを捧げるチュンダの姿に重なるものがあります。チュンダが涅槃図で蘇ったように、徳泉寺の涅槃図から、再びお釈迦さまの大慈悲心に接することができるのですから。

 ここでお知らせ致します。1月のカンボジア・エコー募金は、210回×3円で630円でした。ありがとうございました。

 それでは又、2月21日よりお耳にかかりましょう。

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