テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1109話】「おたまと重機」 2018(平成30)年10月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1109話です。

 昔見たテレビドラマの一場面。主人公の女性が、味噌汁をおたまでお椀によそう時、お椀を鍋の上に持っていくのです。これなら汁がこぼれても、大丈夫です。普通はお椀を鍋の近くに持ち、おたまをそこまで移動させます。汁が下にこぼれることがあります。そのしぐさを見た別の女性が、自分にはない主人公の家庭的雰囲気や女性らしさに脱帽してしまいます。

 食欲の秋ですが、9月16日山形市内の河川敷で「日本一の芋煮会フェステバル」が行われました。30回目の今年に新調された直径6.5メートルの巨大鍋に、里芋3トン、牛肉1.2トン、ネギ3500本を煮込みました。来場者1万2695人に芋煮を配り、ギネス世界記録の「8時間で最も多く提供されたスープ」に認定されたそうです。芋煮は山形の代表的な郷土料理ですし、「日本一の芋煮」に水を差すつもりはありませんが、毎年このニュースが流れる度に違和感を覚えます。

 それは、大鍋から芋煮をすくうのに、おたま代わりに重機のバックホーを使用していることです。あの大鍋を見たら、それが最善の策でしょうし、またその非日常的な仕掛けが評判となり、30年も続いているわけです。勿論おたまになる重機は新品です。オイルをさすような部分には、バターを塗ってあります。衛生上に問題はないのでしょう。それにしても芋煮は食べ物です。

 東日本大震災後、我が町ではバックホーが大活躍です。どれだけの土を動かし、復興の礎を築いたことか。その同じ重機でよそわれた芋煮を食べる気分はどうなのでしょう。ワイルドすぎませんか。食べ物をいただく姿勢としてはいただけない話です。食べ物はただ単に口に入れるのではありません。「いただきます」と言って、食材の命や調理して下さった方に先ず感謝して箸をつけます。

 冒頭の女主人公のように、一滴の味噌汁をも粗末にしないおたまの扱いは、食べる人に対しても、味噌汁そのものに対しても、愛が満ち溢れています。道元禅師は台所における仏道修行を説いた『典座(てんぞ)教訓』の中で、「一茎菜(いっきょうさい)を拈じて丈六身(じょうろくしん)となし、丈六身を請して一茎菜と作()す」とお示しです。つまり「一本の野菜でも仏様のからだとしてたいせつに扱い、仏さまのからだを一本の野菜に込めて、たいせつに生かす」ことが、仏道修行でもあるというのです。勿論、芋煮は秋の行楽の一環ですから、そこまでは言うのは野暮です。それにしてもおたま代りの重機の唸りを聞きながらの食事を見たら、道元禅師もおったまげてしまうことでしょう。

 ここでお知らせ致します。10月28日(日)午後2時徳本寺にて、第12回テレホン法話ライブを開催いたします。ゲストは、動物ものまねの江戸家まねき猫さん。入場無料。ピアノ演奏にのせて、直接テレホン法話をお伝えいたします。

 それでは又、10月21日よりお耳にかかりましょう。

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