テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1108話】「おいとまいたします」 2018(平成30)年10月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます


 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1108話です。

 今から44年前、女優悠木千帆は31歳で、70歳の役を演じました。テレビドラマ「寺内貫太郎一家」でのこと。実年齢より40歳も上の役を好演して、一躍人気者になりました。その3年後テレビのオークションコーナーに出演した時、「売る物がない」との理由で、悠木千帆という芸名を競売にかけました。2万2千円で落札され、以後、樹木希林と改名しました。

 その樹木希林さんが、9月15日亡くなりました。75歳でした。その名を知られたころから、老女役が板についてたかのようです。確かに、老母役で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞や助演女優賞も獲得しています。最近では、カンヌ映画祭の最高賞に輝いた「万引き家族」にも出演。国際的にも評価されました。主役も脇役もこなせる演技派としての面目躍如たるものがあります。

 75歳の生涯とはいえ、何十年も前からその年齢に近い役に親しんできたからでしょうか。独特の生死観がありました。62歳の時、乳がんの手術を受け、その後全身にがんがあることを公表しています。死をどのように思うかと問われて、「死んだことがないからわからないのよ。死はいつか来るものではなく、いつでも来るのよ」と、平然と答えています。そして、あまり先の仕事の予約はせずに、せいぜい1年以内に留めていたそうです。

 さて、「死にとうない」とは、悟りを得た禅僧であるあの一休さんの臨終の言葉です。また江戸時代の狂歌師蜀山人の辞世の句は「今までは他人(ひと)が死ぬかと思いしに 俺が死ぬとは こいつあ たまらん」だそうです。誰しも他人(ひと)の死は、ある程度客観的に捉えることができます。しかし我がこととなったらそうはいかないものです。

 樹木希林さんは「今日までの人生、上出来でございました。これにておいとまいたします」という言葉を残しました。実はこれは、今年5月の新聞に連載されたご自分の生涯を語る記事の最終回の締めくくりで述べたものです。「いつでもやって来る死」を覚悟していたことが伝わります。どんなに悟りきった生き方や言葉を残しても、「これにておいとまいたします」と、心から言える人は少ないのではないでしょうか。それにはやはり「上出来な人生」を歩んでいることが、必須条件となることは明らかです。

 「売る物がない」と芸名を競売にかけた樹木希林さんは、この世の何ものにも未練はなく、来るべき時には潔くおいとまいたしましょうという心意気で、人生を貫いたのでしょう。「覚悟ができた人はより輝き、そうでない方はそれなり」の人生だということでしょうか。

 ここでお知らせ致します。10月28日(日)午後2時徳本寺にて、第12回テレホン法話ライブを開催いたします。ゲストは、動物ものまねの江戸家まねき猫さん。入場無料。ピアノ演奏にのせて、直接テレホン法話をお伝えいたします。

 それでは又、10月11日よりお耳にかかりましょう。

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