テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1091話】「始める」 2018(平成30)年4月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

1091.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1091話です。
 彼が子どもの時分、初めて自分で靴下を履いた時、両足で45分もかかりました。ほんとうに大変だった。大きな戦いだったと言います。現在32歳のカイル・メイナードさんです。冒険家ですが、両手足がないのです。
 カイルさんは、先天性四肢欠損症という体で生まれました。生まれながらにして、腕は肩から肘まで、足は付け根から膝までしかありません。靴下も親が履かせてあげた方が、ずっと簡単で時間もかからなかったでしょう。しかし、親も待つという辛抱を選んで、子どもには何事も自分でできるように育ててきました。
 小学校時代からフットボールチームに所属し、11歳からレスリングを始めています。チームメイトも対戦相手もみんな健常者です。高校1、2年生の時、レスリングの試合はすべて負けました。36試合連続で負けて、毎回震えるほど怖かったけれど、いつか勝ってやろうと、決して諦めませんでした。
 初めて勝って気づきます。勝負の決め手は自分に自信があるかどうかで、相手の資質の問題ではないということを。以来、高校3年生では連勝を収め、全米高校リーグで12位と躍進します。ウェイトリフティングでも記録を出すなど、健常者を凌ぐ実績を残しています。
 そして、2011年無謀ともいえる計画に挑戦します。アフリカ大陸最高峰キリマンジャロへの登頂です。5895メートルを登るためにチームが結成され、入念な準備と過酷なトレーニングをこなしていきます。手と足の部分がないカイルさんが山を登るには、二足歩行ではなく、水泳のクロールのようにして、地べた、急斜面を這いつくばっていくしかないのです。怪我もして、岩と氷河の壁とも戦いながら、登山開始9日目の2012年1月15日ついに山頂を制覇しました。
 カイルさんは言います。「できるようになる唯一の方法は、始めることだからね」。確かに宝くじも、買わなければ絶対に当たりません。頭の中であれこれ思い描いたり、悩んだりしていても、行動が伴わなければ、結果はついてきません。勿論始めたからには、結果が出るように、工夫努力を怠らないことです。
 カイルさんに較べて、靴下を掃くことひとつをとっても、私たちは何事も始めやすい境遇にあることでしょう。だからでしょうか、結果が出るまえに諦めて、また次のことを始めてしまいがちです。「できないという多くの原因は、できない時のけじめを考えずに始めているから」とも言えます。新しい季節、何か始めていますか。まじめに結果を目指しましょう。
 ここでお知らせ致します。3月のカンボジア・エコー募金は、211回×3円で633円でした。ありがとうございました。
 それでは又、4月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1358話】
「さびない鍬」
2025(令和7)年9月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1358話です。 現在全国の100歳以上の高齢者は9万5千人を超えています。徳本寺の過去帳にもここ10年以上毎年100歳を超えた方の名前が記されています。 さて、100歳と言えば良寛さんにまつわる次のような話があります。80歳のおばさんが良寛さんを訪ねてきました。「良寛さん、私もこんな歳になりましたが、もう少し長生きをしたいので... [続きを読む]

【第1357話】
「花には水を」
2025(令和7)年9月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1357話です。 仏教思想家のひろさちやは「仏教は『幸福学』です。仏教にかぎらず、あらゆる宗教が幸福学なのです」と言っています。不幸になりたい人はいません。誰しもが幸せになりたいのです。 仏教を開かれたお釈迦さまの正式な呼び名は「大恩教主本師釈迦牟尼仏」です。大きな恩の教えの主である本物の師匠... [続きを読む]

【第1356話】
「平和の鐘」
2025(令和7)年8月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1356話です。 「弾(たま)となり人殺せしか我が寺の供出させられし釣り鐘は」広島県のある住職さんの歌です。先の戦争で、金属類回収令で多くの寺の鐘が供出させられました。徳本寺の旧釣り鐘堂の梁には鐘を釣っていたと思われる穴だけが開いていました。鐘はお国のためになったのでしょうか。 お寺の鐘は平和... [続きを読む]