テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第1060話】「人間とAI」 2017(平成29)年6月1日-10日

住職が語る法話を聴くことができます

 1060.jpgお元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1060話です。
 コンピューターと対戦して勝ったインドのチェスの達人は、「大勢の人がでぼくを応援してくれた。コンピューターに声援をおくるコンピューターはいなかった」と言いました。しかし、その3年後コンピューターは、チェスの世界チャンピオン、ガルリ・カスパロフさんとの6番勝負で、2勝1敗3分けで勝ちました。チャンピオンいわく「勝たねばならないという重圧に負けた」と。総合成績で人間がコンピューターに初めて敗れたのです。今からちょうど20年前の1997年5月のことです。
 この時、動きがもっと複雑な将棋や囲碁では、コンピューターはまだ力不足とされていました。しかし、チェスでも1秒間に2億手以上を読むほどに計算能力が向上しているので、早ければ2010年、遅くとも2020年頃には、コンピューターが将棋の名人を破る日が来ると研究者は読んでいました。
 そして今年5月20日、将棋の佐藤天彦(あまひこ)名人は、第2期電王戦二番勝負で、人工知能(AI)のポナンザに2局とも完敗でした。名人はポナンザの手を研究し本番に臨みましたが、「思いつかない手を指されて、差がついた」と振り返っています。
 更に5月27日中国で、囲碁の世界最強棋士の柯潔(かけつ)九段が、AI「アルファ碁」と三番勝負を戦い、三番とも敗れました。柯九段は「相手が完璧で力の差が大きすぎた」と言っています。AIは人間独自の能力を超えた感があります。そして「アルファ碁」の開発者は「アルファ碁は始まりにすぎない。医療、省エネ、新材料開発で新天地を切り開いている」と述べています。
 20年前にコンピューターがチェスで人間に勝った技術は、平仮名を漢字に変換するワープロソフトに使われ、将棋ソフトの開発は、カーナビの道路状況判断や到着時刻の予想に応用されています。アルファ碁の深層学習の技術は、患者の生体データから医師より正確に病名を診断する研究や、自動運転などにも応用されていくようです。AIの進歩は、人間に代わって機械が働く分野を確実に広げています。人間は便利さを得て、仕事を失ってしまうのでしょうか。
 一方、AI開発者たちの集まりでロボットをテーマに「2035年、人間が主役の職業は何か」ということが議論されました。もっとも支持を集めた「残りそうな職業」は、「お坊さん」でした。理由として、効率性や合理性というロボットが得意とする分野の対極にある、歴史や文化を継承する、生死を体験できないロボットの説諭は説得力がないなどが挙げられました。
 応援で実力以上の力を発揮したり、重圧で力を出し切れなくなるのも人間ならではです。数字に表しきれない心の動きが人間にはあります。そして、坊さんはどんな時にも平常心であることの大切さを説きます。アレ?もしかしたら、平常心は機械的に動くロボットの得意分野でしょうか。ロボットに負けないように、しっかり坐禅をして、平常心を養いましょう。
 それでは又、6月11日よりお耳にかかりましょう。
 

最近の法話

【第1376話】
「駅伝と復興」
2026(令和8)年3月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1376話です。 今年1月18日に広島市で第31回全国都道府県対抗男子駅伝がありました。宮城県代表チームは2時間16分55秒の大会タイ記録で悲願の初優勝を果たしました。この駅伝の特徴は中学生から社会人までの世代を超えたチーム編成にあります。7区間48㎞を1区4区5区は高校生、2区6区は中学生、3区7区は大学生か社会人が走ります... [続きを読む]

【第1375話】
「被災地のトランペット」
2026(令和8)年3月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1375話です。 東日本大震災で失われたものは数え切れません。しかし大震災後に新たにできたものもあります。たとえば「避難丘」という津波襲来時の一時避難場所となる築山です。町内の沿岸部に3カ所設けられています。そのひとつが「笠野避難丘公園」で、徳本寺の末寺徳泉寺の近くにあります。 徳泉寺は海... [続きを読む]

【第1374話】
「拈華微笑」
2026(令和8)年2月21日~28日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1374話です。 お釈迦さまといえば、両手を組んで坐禅をしている姿が一般的です。徳本寺の本尊はお釈迦さまですが、「拈華微笑の釈迦」といわれます。右手に優曇華の花を持っています。それには次のような話があります。 お釈迦さまが霊鷲山(りょうじゅせん)で大勢の人を前に説法をなさろうとした時、右手に持... [続きを読む]