テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第963話】「精進の槌音」 2014(平成26)年9月21日-30日

住職が語る法話を聴くことができます

963_17.JPG お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第963話です。
 知り合いの秋田の住職さんが書いた「平均年齢80歳の寺」という一文を読みました。お寺は住職夫婦と前住職夫婦の4人暮らしで、とうとう平均年齢が80歳になったというのです。それぞれに身体中に痛みを抱えて、寺を守り抜くのに難儀していますが、まだ元気なので、掃除やお勤めに頑張っていますというものでした。
 敬老の日に合わせて総務省が公表した高齢者の人口推計によれば、65歳以上の高齢者人口は3296万人です。総人口の25.9%にあたり、4人に1人が高齢者ということです。紹介した秋田のお寺さんのように、4人全員が高齢者ということもあり得るわけです。そして、7月に厚生労働省は、日本人男性の平均寿命が初めて80歳を超えたと発表しました。80.21歳です。女性は過去最高の86.61歳で、2年連続世界一です。
 さて、檀家のSさんという男性の方から、お彼岸を前にして、新しくお墓を建てたので供養をしてほしいとの依頼がありました。その方は沿岸部に住まいしていたため、東日本大震災の大津波で家もお墓も流されてしましました。現在は仮設住宅に住んでいます。自分たちは仮設にいながらも、ご先祖さまの住まいがないことが一番の気がかりでした。この度、沿岸部から移転した中浜新墓地に、懸案のお墓を立派に建てることができたのです。
 そしてSさんは8月2日が83歳の誕生日だったそうですが、その日に富士山に登ってきたという話をされました。驚くべきことに、これまで22回も登っているといいます。70歳以上の高齢者は、山頂の神社で名簿に記帳をするそうです。富士登山をする方は、年間30万人くらい、そのうちで高齢者記帳をしているのは1600人ほどのようです。最高齢は99歳で、90歳を超えた方は高齢者登山番付の横綱で、83歳は小結とか。高齢化社会にあって、長寿は珍しくないとしても、その元気さはうらやましい限りです。
 山に登る人は言います「そこに山があるから」と。そして、頂上を目指すという端的な目標があります。その目標達成のためには、それなりの精進が伴います。Sさんは私が知る限りでは、震災後瓦礫に覆われた畑を一番早くに耕した人です。誰もが明日への希望を持てない中で、一人黙々と鍬を揮っていました。70になろうが80になろうが、富士山に登るのだという目標と同じように、大震災にもめげずに作物を収穫するのだという目標を持って日々精進をなさって来たのでしょう。現在は町の新市街地に宅地用地の場所も決まり、来年6月の引き渡しを待ち望んでいます。すでに大工さんに建物の発注はしてあるそうです。あと一年後にはSさんの新居の槌音が聞こえていることでしょう。それは彼岸の教えの一つである「精進」の槌音でもあります。
 ここでお知らせ致します。東日本大震災を語り継ぐテレホン法話集が出版されました。『一歩先へ 二歩先へ―3.11その先へ―』定価1000円。ご希望の方は徳本寺までご連絡ください。電話0223-38-0320です。
 それでは又、10月1日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1364話】
「熊手と人手」
2025(令和7)年11月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1364話です。 落ち葉の季節、毎朝の掃き掃除で熊手が威力を発揮しています。「熊手」とは言い得て妙です。熊の爪のように先端が曲がった竹が何本もあって、一気に落ち葉を掻き集めてくれます。 しかし、本物の熊の手や爪に出会ったら、危険なことは最近のクマ騒動で知るところです。思えば、昨年11月30日に秋田市のスーパーにクマが侵入し、2日... [続きを読む]

【第1363話】
「精進が良い」
2025(令和7)年11月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1363話です。 10月26日、関東・東北地方は朝から雨でした。それにもかかわらず、第19回テレホン法話ライブには、たくさんの方に参加いただきました。そこでみなさんに申し上げました。「何かの集まりの時、天気が良ければ、みなさんの日頃のご精進がよろしいようで、こんなにいい天気になりましたねと挨拶し... [続きを読む]

【第1362話】
「壁と扉」
2025(令和7)年10月21日~31日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1362話です。 達磨さんは縁起物として知られていますが、インドから中国に禅の教えを伝えた曹洞宗の祖師です。菩提達磨大師といいます。赤い法衣に身を包み、面壁九年といわれるほど壁に向かって坐禅を組んでいました。その後ろ姿がいわゆるの達磨さんの形になっています。 坐禅は壁に向かって、ひたすら自分の... [続きを読む]