テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第944話】「命日」 2014(平成26)年3月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

 944.JPG
 お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第944話です。
 3月11日は東日本大震災から3周年ですが、亡くなられた方は4回目の命日を迎え、4回忌ということになります。丸3年で3回忌ではなく4回忌というのは、年回忌の数え方は、亡くなったその年の命日を1回忌とするからです。
 大震災の犠牲者は、斉しく3月11日が命日ということになります。私が住職をする徳本寺・徳泉寺の檀家さんは217人が亡くなっていますが、そのほとんどの死体検案書には「死亡日時:平成23年3月11日午後4時頃、死因:溺死」と記されていました。しかし、Sさんの母親はしばらく遺体が発見されずにいましたが、遺体が確認されたときに届いた死体検案書の死亡日時には、3月17日と記されていました。検案書は医師が死亡を確認して書くものです。詳しい経緯はわかりませんが、遺体が発見された3月17日を死亡した日とされたようなのです。
 当初Sさんは、遺体が発見されて初めて、死亡が確認されるのだから、3月17日が死亡日は当然のことと思っていました。そして、位牌も整え供養を勤めていました。しかし、Sさんの奥さんは、腑に落ちない想いを抱えていました。他の犠牲者の命日と1週間の違いがあります。四十九日や百カ日のお参りの度に、そのずれを納得できずにいました。それは、単にみなさんと日にちが違うというだけのことではなかったのです。
 Sさん一家は震災以降、毎日行方不明の母親を探していました。やっと一週間目に遺体で発見されました。発見されたその日が命日となれば、震災から一週間は母親はどこかで生きていたことになります。そうだとしたら、どうして生きている間に探してあげることができなかったのかと、悔やまれてならないというのです。空白の7日間を納得できず、母親を助けてあげることができなかったという自責の念にさえ駆られていました。主観的にはあの惨状にあって、生きているとは考えにくいことではあります。しかし、客観的には命日までは生きていたと言わざるを得ません。
 その後、Sさんは役場に死亡日の訂正を願い出ました。当時は遺体捜索に全国の警察が派遣されていました。担当していた愛知県警の警察医に照会したところ、医師の誤認定ということで、3月11日が死亡日となりました。震災から8カ月後の11月15日のことです。
 命日までは元気だったその人と、共に生きていたという想いがあります。命日後は亡き人のおかげで生かされているとの想いが巡ります。これからも震災の日を、亡き命に感謝し、生かされている命の有り難さを思う命日として、復興の足取を亡き人に伝えていきたいものです。
 ここでご報告致します。2月のカンボジア・エコー募金は、114回×3円で312円でした。ありがとうございました。
 それでは又、3月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1365話】
「茶禅一味」
2025(令和7)年11月21日~30日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1365話です。 茶室は室町時代末期から発展しましたが、その起源は禅宗のお寺にあります。住職の居住する「方丈の間」を標準にしています。方丈とは一丈四方の大きさ、つまり4畳半の部屋です。因みに禅宗の住職の尊称である「方丈さま」の由来でもあります。 日本のお茶の祖と言われるのは臨済宗の栄西です。栄西は鎌倉時代初期、中国に渡り修行しま... [続きを読む]

【第1364話】
「熊手と人手」
2025(令和7)年11月11日~20日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1364話です。 落ち葉の季節、毎朝の掃き掃除で熊手が威力を発揮しています。「熊手」とは言い得て妙です。熊の爪のように先端が曲がった竹が何本もあって、一気に落ち葉を掻き集めてくれます。 しかし、本物の熊の手や爪に出会ったら、危険なことは最近のクマ騒動で知るところです。思えば、昨年11月30日に... [続きを読む]

【第1363話】
「精進が良い」
2025(令和7)年11月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1363話です。 10月26日、関東・東北地方は朝から雨でした。それにもかかわらず、第19回テレホン法話ライブには、たくさんの方に参加いただきました。そこでみなさんに申し上げました。「何かの集まりの時、天気が良ければ、みなさんの日頃のご精進がよろしいようで、こんなにいい天気になりましたねと挨拶し... [続きを読む]