テレホン法話
~3分間心のティータイム~

【第842話】「仏の子」 2011(平成23)年5月11日-20日

住職が語る法話を聴くことができます

 20110511-6.jpg お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第842話です。
 山元町を襲った東日本大震災の大津波は、ここまでも来るのかというところまで、その牙をむき出しにしました。海岸線から約1.5キロにあるその幼稚園は、駅にも近く普通の住宅地の中に位置していました。地震発生時の午後2時46分は、2台のバスで園児を送り届けようとする時でした。園児たちをバスに乗せたところで、津波が園庭に流れ込んできました。バスは津波に押されたものの、ブロック塀で止まりました。バスの天井近くまで濁流が達し、職員はドアを開け、次々園児をバスの屋根に上げました。しかし、8人の園児と1人の職員が犠牲になりました。
 「娘は僅か1,716日生きただけで大津波の犠牲になってしましました」。その幼稚園の送迎バスで4歳の愛娘を失った父親は葬儀で泣きながらそう挨拶をしました。娘さんにとっては、幼稚園はとても楽しいところ、送迎バスの中だって同じくらい楽しい時間だったはずです。そんなところに津波が襲ってこようとは、子どもたちは勿論、大人も誰一人として想像だにしなかったでしょう。
 またその母親は、葬儀の前に寺に来られ、「娘はまだ右も左も判らないままで亡くなってしまいました。ひとりであの世に行っても大丈夫でしょうか」と問いかけてきました。「大丈夫ですよ。仏さまに導かれて行くのですから、あちらのことは仏さまにお任せしましょう」と、答えるのが精一杯でした。両親は、なにも判らない我が子だから、どんなときにも付き添っていなければならない。それができなかったばかりに、災難から逃れることができなかったという思いもあったのでしょう。しかし、今回ばかりは、その大人の想定をも超えた自然の猛威としか言いようがありません。
 さて、仏さまの世界では、右も左も判らない子どもこそが、最初に仏さまになることができるような気がします。右や左が判るばかりに、仏さまから何か言われても、比較をして判断に迷いができたり、自分の都合を優先して、素直に聞き入れることができないということもあります。私たちがこの度の津波に際し、いささかの知識があって、まさかここまでは来ないと思い込んでいた節があったように・・・。ところが子どもは何も判らなくても、聞く耳は優れています。素直にそのまま聞くから、迷うことはありません。
 「子どもは3歳までの可愛さで一生分の親孝行をする」といった人がいます。迷いなく素直だからこその可愛さなのでしょう。1,700日余りで亡くなった子どもは、迷いなく可愛い盛りだったことでしょう。これからは更にずっと迷いのない仏の子になるのです。その仏の子を拝むことで、親も迷いが少なくなり仏の道に導かれるとすれば、それは亡き子どもの親孝行とは言えないでしょうか。
 ここでご報告致します。4月のカンボジア・エコー募金は、400回×3円で1,200円でした。ありがとうございました。
それでは又、5月21日よりお耳にかかりましょう。

最近の法話

【第1376話】
「駅伝と復興」
2026(令和8)年3月11日~20日

お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1376話です。 今年1月18日に広島市で第31回全国都道府県対抗男子駅伝がありました。宮城県代表チームは2時間16分55秒の大会タイ記録で悲願の初優勝を果たしました。この駅伝の特徴は中学生から社会人までの世代を超えたチーム編成にあります。7区間48㎞を1区4区5区は高校生、2区6区は中学生、3区7区は大学生か社会人が走ります... [続きを読む]

【第1375話】
「被災地のトランペット」
2026(令和8)年3月1日~10日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1375話です。 東日本大震災で失われたものは数え切れません。しかし大震災後に新たにできたものもあります。たとえば「避難丘」という津波襲来時の一時避難場所となる築山です。町内の沿岸部に3カ所設けられています。そのひとつが「笠野避難丘公園」で、徳本寺の末寺徳泉寺の近くにあります。 徳泉寺は海... [続きを読む]

【第1374話】
「拈華微笑」
2026(令和8)年2月21日~28日

住職が語る法話を聴くことができます お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第1374話です。 お釈迦さまといえば、両手を組んで坐禅をしている姿が一般的です。徳本寺の本尊はお釈迦さまですが、「拈華微笑の釈迦」といわれます。右手に優曇華の花を持っています。それには次のような話があります。 お釈迦さまが霊鷲山(りょうじゅせん)で大勢の人を前に説法をなさろうとした時、右手に持... [続きを読む]