テレホン法話
~3分間心のティータイム~
【第765話】「染み抜き職人」 2009(平成21)年3月21日-31日
お元気ですか。3分間心のティータイム。徳本寺テレホン法話、その第765話です。
卒業入学シーズンですが、着なれない着物を着たために、染みを作ってしまったと、お嘆きの方もいらっしゃるかもしれません。ある染み抜き職人さんが言いました。「私たちの仕事は、仕事をしたかどうか分かってはだめなんです」。なるほど、前から染みがあったかどうかわからない第三者が、きれいになった着物を見ても、染み抜きされたかどうかは判断できません。染みが薄くなっていたり、少し残っていたりすれば、ああこの染み抜き職人は、こんな半端な仕事しかできないんだと思われます。半端な仕事でも、仕事をしたことは分かってもらえます。
完璧な仕事をすればするほど、その仕事の痕は残りません。仕事をしなかったのではないかと思われたら、本物の染み抜き職人といえるのかもしれません。元通りきれいになって当たり前。誰がやったと名前が残るわけでもありません。全く己を空(むな)しゅうしている姿です。
世の中には、大した仕事もしていないのに、「俺がやった」と自慢げにふるまう人は多いものです。たまに例外として、大それたことをしても、「それは秘書がやった」などと言って、決して自分を出さない奥ゆかしい人もいますが・・・。ともかく、俺が俺がと、「我」を出したがるものです。「俺がやった」「俺が正しい」「俺が一番」という風にです。
そして、この「我」が蔓延(はびこ)ると、私たちの心にも染みを作ることになります。どんなシミかといえば、「憎しみ」というシミです。生きている者同士、好きになる人もいれば、嫌いでしょうがないという人もいます。すべては自分可愛いさで、「俺が」という気持ちの成せる業です。憎しみを抱いていれば、心が晴れず、「苦しみ」も伴い、やがては、「悲しみ」を招くというような結果がないとも限りません。
―暑さ寒さも彼岸まで―の言葉通り、程よい季節感を、そのまま心の持ちようにして、「かたよらない」「こだわらない」日暮らしをしましょう。「あなたのおかげで仕事ができた」「あなたのおかげで間違わずに済んだ」と、己を空しゅうして相手のおかげを思えるようであるなら、立派な「心のシミ抜き職人」です。
「そうは言っても、長年の心のシミは、簡単には抜けませんよ」。そんな御仁には、素直に謝ります。「しみません」。但し、彼岸は秋にもありますので、その時までは何とかなるでしょう。楽しみにしております。
それでは又、4月1日よりお耳にかかりましょう。
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